・技術士ってなに?国家資格なの?
・知り合いが技術士らしいけど、それってすごいの?
・他の資格で例えたらどれくらいの難易度なの?
あなたは『技術士』という資格の名前を聞いたことがあるでしょうか?
技術士は一般的な知名度が皆無といっていいほど低いので、『技術士』と聞いてもこのような疑問を持つ方は多いと思います。
しかし、実は理系社会人の間では『技術士』は科学技術系で最難関かつ最高峰の国家資格として知られています。
『技術士』は理系の間では一目置かれる国家資格なんですよ。
ということで、本記事では『技術士』について解説します。
技術士とは
技術士は科学技術に携わる技術者向けの国家資格のひとつです。
技術士は文部科学省によって認定される国家資格で、弁護士や医師などの他の省庁が認定する国家資格とあわせて5大国家資格と呼ばれたりします。
資格名称 | 資格試験 | 所轄省庁 |
---|---|---|
弁護士 | 司法試験 | 法務省 |
弁理士 | 弁理士試験 | 特許庁 |
医師 | 医師国家試験 | 厚生労働省 |
公認会計士 | 公認会計士試験 | 金融庁 |
技術士 | 技術士試験 | 文部科学省 |
例えば、弁護士が法律系で最高位の国家資格と位置付けられているのと同じように、技術士は科学技術系で最高位の国家資格とされています。
技術士の定義
技術士は技術士法で次のように定義されています。
技術士法第32条第1項の登録を受け、技術士の名称を用いて、 科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、 設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者
引用:技術士法 第2条 第1項
なかなか堅苦しい表現ですね。
分かりやすく言い換えると「技術士」は高い能力を持つと国から認められた技術者ということです。
「スゴイ技術者だよ」と国からお墨付きをもらえた人が「技術士」なんだね
技術士の仕事内容
技術士は実に様々な分野で活躍しています。
技術士が活躍する分野のごく一例を紹介します。
私は道路やトンネル、橋、ダムなどの設計や施工管理を行っています
私はパソコンやスマートフォンの部品を製造する装置の設計をしています
私は化学メーカーで試料の分析をしています
私は経営コンサルタントとして工場の生産性向上ための計画・評価をしています
このように、技術士は幅広い分野で活躍しています。
具体的な仕事内容は日本技術士会の発行している資料が分かりやすいです。
子供向け:「技術士って? ~これが技術士の世界~」日本技術士会
大人向け:「キャリアモデル」日本技術士会 男女共同参画推進委員会
技術士の部門一覧
技術士にはそれぞれの分野における専門的な知識や技術が求められます。
技術士が活躍できる分野は建設や機械、農業、化学など多岐にわたり、必要とされる専門知識もそれぞれ異なります。
ひとくちに科学技術と言ってもその種類は様々で、多岐に渡る分野を全てカバーするほどの専門知識や応用能力を1人の技術者が身に着けることは現実的には不可能です。
そのため、技術士は以下の21部門に分かれており分野別に住み分けがされています。
技術士は自分がどの部門に該当する技術士なのかを表示することを法律で義務付けられています。(※第44条 名称表示の場合の義務)
技術士が活躍する主な企業
技術士は様々な企業で活躍しています。
「そんなことどうやってわかるんだよ」と思われるかもしれませんが、企業内技術士会を運営している企業はそのことを公開しているので、技術士が活躍していることはそこからわかります。
また、企業情報の中で資格保有者数を公開している企業もありますし、会社として公開した論文の中で著者のところに技術士と記載されていたりもします。
以下に、技術士が活躍していることを公開している代表的な企業を挙げてみます。
以上は代表的な企業であり、他にも多数の企業があります。
また、技術士が求められる分野は多岐にわたるためさまざまな企業で活躍することができます。
この一覧には記載しませんでしたが、日産技術コンサルタントや東京ガスエンジニアリングソリューションズのように企業本体のサイトには有資格者を記載していないけど子会社のサイトには有資格者を記載しているというところも多いですね。そういうところはたぶん企業本体にも技術士がいると思います。
技術士を取得するメリット
「技術士」は一定の技術的能力を持つことを証明する資格です。
技術士の取得には結構な努力が必要ですが、取得することで以下のようなメリットがあります。
周りから信頼と評価が得られる
技術士を取得していると、周りから一定の信頼と評価が得られます。
技術士試験は難しい試験ですから、試験に合格していることで技術的な知識や応用力を持っていると証明することが出来ます。
技術士を知らない人に対しては効果がないので注意です。
収入が増える可能性がある
技術士は技術系で最高峰の国家資格です。
そのため、技術士を取得することで高い評価を得られ収入アップに繋がりやすいというメリットがあります。
実際の年収データを見ていきましょう。
厚生労働省が発行する「賃金構造基本統計調査」と国税庁が発行する「民間給与実態統計調査」によると、技術士は日本人全体よりも平均年収が高いという傾向があります。
男女別で見ても、技術士は平均より高い収入を得ているようです。
職種 | 性別 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年収 |
---|---|---|---|---|
技術士 | 男性 | 46.6歳 | 14年 | 632.3万円 |
給与所得者 | 男性 | 46.7歳 | 13.9年 | 539.7万円 |
技術士 | 女性 | 39.8歳 | 8.8年 | 542.9万円 |
給与所得者 | 女性 | 46.7歳 | 10.7年 | 295.5万円 |
給与所得者の平均年収「民間給与実態統計調査(国税庁)」
技術士の年収についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
メリットが得られる代わりに難易度は高い
技術士試験の難易度は非常に高いです。科学技術系で最難関の国家資格とされています。
他の国家資格と比較しても高い偏差値であり、大きなメリットが得られるかわりに難易度は高くなっています。
資格名 | 偏差値 |
---|---|
司法試験(弁護士など) | 77 |
公認会計士 | 77 |
税理士 | 75 |
弁理士 | 75 |
医師 | 74 |
技術士 | 70 |
中小企業診断士 | 67 |
一級建築士 | 66 |
気象予報士 | 64 |
歯科医師 | 63 |
行政書士 | 62 |
薬剤師 | 62 |
技術士補 | 60 |
ファイナンシャルプランナー1級 | 58 |
日商簿記検定2級 | 58 |
TOEIC700点 | 57 |
弁護士ほど超難関というわけではありませんが、中小企業診断士と同程度以上には難関です。
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)
技術士には、以下のような資質能力(コンピテンシー)が求められます。
技術士試験では、受験生に技術士としてふさわしい資質能力があるかを確認されます。
こちらの記事では、技術士を取得するメリットやデメリットについて私の体験談を紹介しています。
興味があれば参考にしてください。
技術士になるには
技術士になるためには、技術士試験に合格し日本技術士会に登録しなければなりません。
ここでは技術士になる方法について解説します。
技術士試験の概要
技術士試験は一次試験と二次試験で構成されています。
それぞれの試験内容は以下の通りです。
二次試験を受けるためには実務経験が必要なんだね
なお、一次試験と二次試験はまとめて受験することが出来ません。
最短でも「1年目で一次試験に合格し、2年目で二次試験に合格する」という2年掛かりの試験になります。
※JABEE認定課程の修了者であるなどの理由で一次試験が免除される場合はこの限りではありません。
技術士一次試験が免除される条件とは?
試験の難易度
技術士試験の難易度は非常に高いです。科学技術系で最難関の国家資格とされています。
試験の難易度は一概に合格率だけで論じるものではありませんが、二次試験の合格率が約10%程度であることからどのくらい難しいかはイメージ出来るかもしれません。
特に、二次試験は東京大学を卒業するような高学歴の方でも合格率は約26%と、非常に難しい試験となっています。
技術士試験の勉強方法
技術士試験に合格するためには、実に色々なことを勉強する必要があります。
技術士試験の勉強方法はこちらの記事で詳しく解説しています。
こちらのガイドに沿って勉強を進めていけば大体合格点に達することが出来るような内容になっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
技術士試験合格までのロードマップ【完全ガイド】
技術士試験は独学で合格できる?
結論から言うと、技術士試験に独学で合格することは結構厳しいです。
以下に記載する「独学で合格できる条件」に該当していれば独学合格も可能だと思います。
該当する条件が多いほど独学合格の可能性も高まります。
上記条件に複数該当する場合には独学での合格も充分可能かと思います。
本サイトで公開している技術士試験の対策情報を読んでちょっとコツを掴めば、合格点に到達することは可能でしょう。
一方、普段そのような環境にいないという方は、独学で合格を目指すというのはなかなか難しいと思います。
なぜなら、試験合格には論理的思考力が必要になりますが、この力はネットで対策情報を見たり対策本を読むだけではなかなか鍛えられないものだからです。実際に自分で論文を書き、それを第三者の視点から指摘してもらわなければ論理的思考力は鍛えられません。
自分の周りに先輩技術士がいる方は、自分の書いた解答論文を添削してもらうようにしてください。
添削してもらった内容に沿って論文を修正していけば自然と論理的思考力が身についてきます。
「論文を書き、添削内容を見て修正」
これを繰り返していけば結構あっさりと合格できるはずです。
周りに先輩技術士がいない方は技術士講座を受講して論文の添削をしてもらってください。
インターネットで「技術士 講座」などと検索すれば色々な講座が出てきます。
これまでは技術士試験講座を受講するためには何十万円も掛かったりと高い費用が必要でしたが、最近では数万円程度の高いコストパフォーマンスをもった講座も出てきています。
講座に掛かる費用は投資と考え、受講してみるのが良いかと思います。
どの講座を選べば良いか分からない場合は「アガルートアカデミー」「スタディング」「SAT」の添削付きコースを選んでおけば問題ありません。
いずれの講座も最高クラスのコストパフォーマンスですので、あとは自分がどれくらい受講料を掛けられるで決めれば良いです。
技術士制度の課題と今後の展望
技術士制度の問題点
技術士制度は日本において高度な技術力を持つ人材の育成・認定を行う制度です。
しかし、現在の技術士制度には以下のような問題が存在しています。
技術士制度の課題と今後の動向
技術士制度がもつ問題に対して以下のような課題を遂行される予定です。
このことは文部科学省の「今後の技術士制度の在り方について」で公開されています。
技術士制度がどのように変わっていくか、今後もチェックしていきますね。
技術士に関する補足情報
技術士の人数
技術士の人数は、2021年の時点で約9.5万人となっています。
文部科学省のデータによると日本の技術者の人数は約238万人(2015年時点)だそうです。技術者を100人集めたらそのうち4人は技術士という割合ですね。
技術士の人数についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
技術士の人数はどのくらい?【データから推移を見る】
技術士の種類(技術士補?修習技術者?)
技術士に関連する用語として、『技術士補』や『修習技術者』というものもあります。
ここではその『技術士補』や『修習技術者』という用語についても併せて解説します。
『技術士補』『修習技術者』はいずれも見習い技術士のようなものです。
技術士になる過程で一次試験に合格(もしくはJABEE認定プログラムを修了)すると、「修習技術者」になります。
そして、「修習技術者」が「技術士補」として登録をすると「技術士補」になります。
「修習技術者」「技術士補」いずれも技術士二次試験に合格して技術士会に登録すれば「技術士」になることができます。
「技術士」になるためには「技術士補」である必要はありません。
ちなみに、技術士補は「技術士の補助をする」という役割があり、
そこから『技術士補』と呼称されています。
技術士の種類についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
技術士の種類を解説!技術士、技術士補、修習技術者の違いとは何か
技術士ブログを見たい方はこちら!
技術士が運営しているブログはこちらになります。
いずれのブログも技術士を取得した方が運営していますので、ためになることが書かれていますよ。
らくちん技術士
建設部門、総合技術監理部門の技術士であるらくちん技術士さんのブログです。
二次筆記試験の考え方についてかなり具体的にまとめられており、試験対策として参考になるサイトです。
その他の資格を調べたい方はこちら!
『技術士』以外にも役に立つ資格は世の中に沢山あります。
色々な資格を調べたい場合には以下のサイトがおすすめです。
気になる資格がみつかるサイト・資格Hacks
もちろん『技術士』に関連する記事も沢山ありますよ。
当記事もこちらのページで紹介されています。
まとめ
このページでは技術士について解説しました。
技術士は文部科学省によって認定される国家資格で、技術系では最高峰の国家資格とされています。
肩書と高めの年収が期待できますが、試験の難易度は非常に高いです。
4~7年の実務経験に加えて技術士試験に合格する必要があり、中でも論述問題がある二次試験は合格率12%、東京大学のような高学歴の方に絞っても合格率25%と難しい試験です。
試験に合格するためには論理的思考力が必要であり、論理的思考力を鍛えるためには自分の書いた論文を第三者に見てもらうという勉強を行う必要があります。
独学でも不可能ではないですが、現実的には講座を受講するのが良いかと思います。
技術士試験対策講座おすすめランキングTOP6【徹底比較】
技術士が増え、多くの方に認知されるようになることを願います。
コメント
[…] […]