- 出願書類をどう書いたら良いかわからない
- 申込書の書き方をしりたい
- 実務経験の具体例を教えてほしい
技術士一次試験に合格した方はおめでとうございます。
あるいは、JABEE教育課程を修了しているのでいきなり二次試験に挑むという方もいるかもしれませんね。
どちらの方も、次に挑戦するのは難関の技術士二次試験です。
二次試験は出願書類として受験申込書と実務経験証明書を提出する必要があります。
「実務経験証明書とか面倒くさいな」「どうせただの申込書でしょ?適当に書いてさっさと出しちゃお」とか思っていませんか?
しかし、これらの書類をただの願書と考えて適当に書いてしまうと後々痛い目を見ることになります。
なぜなら、実務経験証明書は口頭試験の質問材料としても使用されるからです。
いい加減な内容で提出してしまうと、口頭試験で厳しい戦いを強いられます。そのため、実務経験証明書は口頭試験を見据えて戦略的に記載していく必要があります。
そこで、本記事では
『口頭試験を有利に戦うための実務経験証明書の書き方』
を解説します。

私自身もこの書き方で技術士二次試験に一発合格しています。
年齢や経歴は人それぞれなので全く同じ内容である必要はありませんが、抑えるべきポイントは同じですので参考になるかと思います。
この記事を読むことで技術士試験合格に近づくはずです。
自分の経歴に合わせてカスタマイズして活用してくださいね。
必要な申込書類は受験申込書と実務経験証明書のふたつ

まずは技術士二次試験を受験する際に提出する申込書類について説明します。
出願書類は毎年4月1日から日本技術士会のホームページで配布されます。
1枚目の書類が「受験申込書」、2枚目の書類が「実務経験証明書」であり、2枚で1セットとなっています。
- 受験申込書:氏名、住所、勤務先などを記載する
- 実務経験証明書:業務経歴、業務内容の詳細を記載する
令和5年度の申込書類は日本技術士会のホームページからダウンロードできます。
※申し込み期間の終了とともに、申込書類公開も終了しました。
「受験申込書」は氏名、住所、勤務先などを記載する形になっており、こちらは記入要領を参考にして記載すれば特に問題はありません。
問題は「実務経験証明書」です。
実務経験証明書は口頭試験の審査材料として使用されるので、口頭試験を有利に運ぶためにもしっかりポイントを押さえて記載する必要があります。



実務経験証明書は多くの人が「どう書けば良いかわからなくて書けない…」と悩んでしまう書類です。実務経験証明書は重要な書類ですので、これからじっくり解説していきますね。
実務経験証明書を書くコツ・ポイント

業務経歴(上半分の部分)には実務経験を書く
まずは業務経歴欄(実務経験証明書の上半分の部分)の書き方を解説します。
業務経歴は自分のこれまでの実務経験を記載する項目です。
この項目では受験資格である必要経験年数を満たしているかが確認されます。

受験資格である必要経験年数を満たすように記載するのは当然ですが、他にも自身の技術者としての資質をアピール出来るような記載にすることが望ましいです。
業務経歴を記載する際に抑えるポイントは次の3つです。
- 自分の受験部門や選択科目に合う業務を書くこと
- 自分が主体的に担当した業務であること
- 業務を通じて成長したとアピール出来るようにすること
①自分の受験部門や選択科目に合う実務経験を書く
自分が受験する部門や選択科目に該当しているなと判断しやすい業務を書くようにしてください。
自分が担当してきた業務が受験部門や選択科目だけにドンピシャで当てはまるという場合はそのまま書けば問題ありません。

しかし、自分の担当した業務が複数の部門や選択科目に当てはまる場合には注意が必要です。
自分の担当した業務が複数部門や選択科目に当てはまる場合、何も考えず業務経歴を記載してしまうと審査官に「受験部門が違う」と判断されてしまう可能性があります。
そうすると筆記試験に合格していたとしても口頭試験で落とされてしまうので気を付けてください。
じゃあどう書けば受験部門や選択科目に当てはまると判断しやすいかというと、次のようにすれば良いです。
技術士会が公開している「技術部門/選択科目の内容」に記載されているワードを使って書く
(例)
機械部門-機構ダイナミクス・制御「建設機械○○の~」
建設部門-都市及び地方計画「都市交通施設△△の~」
単に「建設機械の設計」とだけ書いても漠然としすぎて審査官もイメージできませんから、もう少し実際の業務に合わせてわかりやすい記載内容にする必要があります。
そのあたりは実際の自分の業務経歴を照らし合わせつつ、用紙の記入スペースと相談しながら記載してください。
上記のポイントを抑えて業務経歴を書いたとしても、口頭試験で「君は○○部門なんじゃないの?」という意地悪質問が来る可能性があります。例えば、車業界の技術者は機械部門にも金属部門にも当てはまる業務をしているので、このような質問が来る可能性が比較的高いですね。
もしこのような質問が来たら、私なら次のように答えるかなと思います。
Q.業務経歴に構造解析とありますが、機械部門でなく金属部門で受験した理由はなんですか?
A.私は大学の頃から金属材料の専門家となるような勉強をしてきました。現在の仕事に就いてからも、金属材料の専門家という視点から構造解析を行ってきました。そのため、今回の受験では金属部門が最もふさわしいと考えて金属部門を受験しました。
こんな感じですかね。
私の場合、大学では金属材料に関する学科やゼミにいたので、それを踏まえて回答を考えました。
自分なりにアレンジしてもらう必要はありますが、こんな感じで回答できれば良いかと思います。
②自分が主体的に担当した業務であること
自分が主体的に取り組んだ業務を記載しましょう。
誰かに指示されて、単に作業しただけというのはNGです。
受験申込書入力要領には以下の業務を書くことと記載されています。
「科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務(単純な技能的な業務、研究・設計等に付随する庶務的な業務を除く)」
技術士法第2条
つまり、「CADを用いた製図」や「単純な計測作業」といったことはNGで、「○○の設計」等のような自分が主体となって科学技術を用いて問題を解決したという業務を記載する必要があるということです。
具体例として、以下のような業務経歴が挙げられます。
- ○○の装置の設計
- 基礎地盤の計画、設計
- ○○の研究
- ○○の開発
※「開発」という業務についてですが、技術士法第2条では技術士の業務に「開発」とは記載されていません。そのため、業務経歴に書くのは「開発」ではなく「設計」や「研究」など技術士法第2条に記載されている内容の方が良いかもしれません。
ちなみに私は受験時にがっつり「開発」と書いてしまいましたが、特に指摘されなかったことを考えるとそこまで致命的なものではないのかもしれません。ただ、素直に条文に従って「設計」や「研究」と言い換えた方が無難かもしれません。
なお、必ずしもその業務の責任者である必要はありません。
例えば、業務全体の責任者は上司であったとしても、自分に任せられた範囲の中で自分で考え主体的に問題解決にあたったという業務であればOKです。

人から指示されるままに行った業務ではなく、
自分でやり方を考えて行った業務を書くということですね
入社したての新人の頃(1年目~2年目)の業務経歴はどのように書くべきでしょうか?
入社してすぐに自分が主体的になって業務を行うなんて中々難しいですよね。
賛否がありそうですが、そのような場合には「○○の設計の補助業務」と書くと良いかと思います。なお、この書き方自体は技術士会が発行している「技術士第二次試験受験申込み案内」の中で例文として記載されていますので、このように書けば問題ないかと思います。
③業務を通じて成長したとアピール出来るようにすること
業務経歴の記載欄は5行あり、時系列順に業務経歴を記載するようになっています。
この時、業務を通じて成長してきたことを口頭試験で説明しやすいように記載すると良いでしょう。
業務経歴を見るだけで成長を感じるような実務経験を記載出来れば一番良いですね。
とはいえ、限られた紙面上ではそれも難しいと思います。
そんな場合には『口頭試験で』成長をアピール出来るかという視点で記載するのがおすすめです。
例えば、業務経歴には実務経験としてこのように記載しておきます。
「2016年 設計担当者として○○の設計を行った」
「2018年 設計担当者として△△の設計を行った」
そして、口頭試験で質問の流れで「2016年では技術者として未熟で視野が狭く、設計した物は性能は充分でしたが価格が高いという結果に終わってしまいました。その時の反省を活かし、2018年に担当した△△の設計では性能と価格のバランスをとりながら設計を行いました。」という説明が出来ると、技術者としての成長をアピールできます。
技術士は自身の資質向上の責務が課せられており、試験では常に自己研鑽しているかどうかが口頭試験で判断されます。
業務経歴を見てそのまま評価されることはないでしょうが、業務経歴を質問材料にして口頭試験で質問されるというケースがあります。
そのようなケースも、業務経歴をしっかりと練っておくことで対応しやすくなります。
業務内容の詳細には小論文を書く
上記で記載した業務経歴の中からひとつを選び、その業務内容の詳細を720字以内で記載する項目です。
この項目では、技術士としてふさわしい業務をしているかを確認されます。
720字ということで、ボリューム的には小論文といったところです。
また、記載した内容は口頭試験で資質確認の材料として使用されますので、口頭試験で評価される資質が確認しやすいような構成にするのが良いです。
①受験申込案内の記入例をベースにする
受験申込案内には次のように記載されています。
業務経歴の「詳細」欄に○を付したものについて、業務内容の詳細(「目的」、「立場と役割」、「技術的内容及び課題」、「技術的成果」など)を、受験申込書に記入した「専門とする事項」を踏まえ、720字以内(図表は不可。半角文字も1字とする。)で、簡潔にわかりやすく整理して枠内に記入する。
引用:技術士第二次試験受験申込み案内 P.32
せっかく例を記載してくれていますので、ここは素直にこれをベースに構成して記入しましょう。
もちろん、各個人の状況によってある程度のアレンジも良いでしょう。
重要なのは試験管にわかりやすく伝わるかどうかです。
②読みやすい構成を意識する
論文形式ですから、読みやすい構成になるよう意識しましょう。
読みやすい文章とするために、以下の内容を見出しにして構成すると良いでしょう。
- 業務の目的、業務における自分の立場や役割
- 業務の過程で発生した問題は何か
- 問題解決のためにどのような解決策を提案したか
- 業務で得られた成果
技術士は文書や口頭で効率的にコミュニケーションがとれることが求められ、試験でもその能力があるかを確認されます。
業務経歴票は採点の対象にはなっていないので、ここでの記載内容がそのまま直接採点されることはないと思います。
しかし、直接採点されることはなくても、分かりやすい業務内容の詳細が書けていると「こいつ説明上手いな」という印象を持ってもらえます。そうすると口頭試験でもその印象のまま有利に採点してくれる可能性があります。

直接採点されることがないとしても、『業務内容の詳細』は分かりやすく書いておくが吉ですね。
③口頭試験の評価項目を意識する
口頭試験では以下の項目について評価されます。
- コミュニケーション:関係者と上手くコミュニケーションがとれるか?
- リーダーシップ:関係者の利害調整ができるか?評価:業務を振り返り、他の業務や次の業務に活かせるか?
- マネジメント:人・物・金・情報をバランスよく適切に配分できるか?
口頭試験では業務経歴や業務の詳細を見ながらこれらを確認するような質問がされますので、それを意識した構成にしておくと口頭試験で有利です。
口頭試験で評価される項目についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
⇒口頭試験で評価されるポイントは?

ここでひとつ注意ですが、上記のように口頭試験では専門的学識については評価されないことになっています。
ただし、専門的学識は問われないからといって関係者との調整ばかりの業務内容を記載してしまうと、技術者ではなく折衝担当者のような業務となってしまいます。
あくまでも技術士試験ですから、技術者としてふさわしい技術的な問題を解決したエピソードの中で関係者との調整をしたことに触れられるのが理想的です。
④該当する部門に関するワードを入れたい
自分の業務内容が受験部門や選択科目に該当していることをわかりやすくアピールするために、該当するワードを入れておくと尚よいです。
自分が受験する部門に該当するワードは技術士会が公開している「技術部門/選択科目の内容」を参照してください。
- 機械部門:空調機器、ポンプ、産業用ロボットなど
- 電気電子部門:アクチュエーター、電子デバイス、工場電気設備など
- 建設部門:コンクリート構造、地すべり、新幹線鉄道など
実務経験証明書(業務内容の詳細)の例
それでは最後に実務経験証明書のうち「業務内容の詳細」の例を記載します。
これは一例ですので、参考に出来るところは参考にするというスタンスでお読みください。

公開できない箇所もありますので、そこは黒塗りにしています。
<業務内容>
新製品開発に伴う設計、評価、特許出願
<業務内容の詳細>
立場と役割:主開発担当者として設計、評価、特許出願を行った。また、生産体制構築時には営業部及び製造部との調整を行った。
課題:○○は△△(表面処理技術)の手法を用いて製造しており、△△時のパラメータを制御することで○○として必要な機能及び特性を持たせている。本業務では、新製品として必要な特性を決定し、その特性を安定して得るための適切な製造パラメータを決定する必要があった。しかし、○○は業界の中でもJIS等で規定されるデジュールスタンダードな製品はなく、満たすべき製品の特性や製造方法をゼロから検討する必要があった。検討すべきパラメータの種類が多く、全ての組み合わせを検討すると膨大な数の実験が必要であった。さらに、他社に先駆けて○○を開発しデファクトスタンダードと言える製品を目指すという背景から短期間での開発が要求され、限られた期間で成果を出すことは困難だった。
課題解決の方法:開発期間を短縮するために、表面技術の観点から「製造パラメータと○○の特性の因果関係」を原理的に検討し、重要と考えられる要因を抽出して重点的に実験を行った。(例 成膜した金属膜の残留応力が××に与える影響等)併せて、効率よく実験を行うために実験計画法の手法を活用した。
得られた成果:限られた期間内で新製品である○○を開発した。規格に先立ち○○を開発したことの意義は大きい。また、特許出願を実施しており、審査を経て認定されれば開発した製品や製造技術を守ることができる。加えて、本業務で立案した実験計画が公益財団法人 □□県産業振興財団から評価され補助金の支援が得られた。
実際に実務経験証明書を書いてみよう
ここまでで解説したポイントを参考にしながら実際に実務経験証明書を書いてみましょう。
実際に書いてみると分かるのですが、ここまでに解説したポイントを抑えながら実務経験証明書を書くのは結構難しいです。

特に、小論文形式の「業務経歴の詳細」は必要なアピールをしながら720字に抑えるというのはかなり慣れが必要です。
合格できる実務経験証明書を書くために重要なのはやはり繰り返しの実践です。
「書類作成」⇒「添削」⇒「修正」⇒「添削」と繰り返していき、実務経験証明書の質を上げていってください。
添削は自分ではなく必ず第三者に見てもらうようにしましょう。自分で客観的に見て添削を行うというのは至難の業です。
あなたの周りに先輩技術士がいればその方に、いないようであれば講座を活用するようにしましょう。
<講座を受講していない方にお知らせ>(2023/04/11追記)
技術士二次試験の申し込み期間は2023年4月17日までです。
今から実務経験証明書の添削を受けようとしても間に合わない可能性が高いと思います。実務経験証明書の仕上がりがイマイチだと口頭試験は厳しい戦いとなります。
本当は実務経験証明書をしっかり仕上げるのが理想でしたが、今そんなことを言ってもしょうがありません。
もしこれから講座を申し込もうと思っているなら、口頭試験を乗り越える確率を上げるために模擬口頭試験付きの講座を選ぶようにしてください。
例えば、アガルートアカデミーなら「Zoomによる模擬口頭試験」が付いていますし、令和4年度には二次試験の合格率77.78%という実績も出しているためおすすめです。
記入の際の注意点
提出の前に、次の点について確認しておきましょう。
業務経験の年数や業務内容の詳細の文字数を間違えると致命的ですので、しっかり確認しましょう。
- 業務経験の年数は必要年数を満たしているか?
- 業務内容の詳細として選んだ業務経歴に〇を記入したか?
- 業務内容の詳細は720字以内で収まっているか?
まとめ
技術士二次試験の出願書類である「受験申込書」「実務経験証明書」を書くコツ・ポイントを解説しました。
ここまで挙げてきたコツ・ポイントはいずれも口頭試験を視野に入れたものです。
口頭試験は時間が短く、業務を一から説明している時間はありません。
実務経験証明書のみで試験官が大まかな資質確認の準備が出来、口頭試験で少し補足するだけで資質確認が出来るような構成にするのが理想と考えます。

口頭試験では業務経歴票の出来が影響してきますので、頑張って完成度を高めていきましょう
実務経験証明書の完成度を高めるためには添削をしてもらうのが効果的です。
実務経験証明書の完成度を客観的にみることは自分ではなかなか難しいです。
かといって、誰かに見てもらおうと思ってもそもそも自分の周りに先輩技術士がいないことも多いでしょう。
そんな時には技術士講座を受講するのがおすすめです。
技術士講座なら担当している講師も技術士試験に合格した技術士ですから、どのような実務経験証明書を書けば合格できるかを正確に教えてもらえます。
身の回りに技術士がいないという方には特に必要になります。
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