- そもそも技術士と博士号の定義ってなに?
- 技術士と博士はどういう所で働いている?
技術士と博士号はいずれも科学技術を扱う専門家という共通点があります。
どちらも専門性の高い資格ですが、社会における知名度や就職時の有利不利は異なります。
本記事では「技術士」と「博士」についてそれぞれ解説します。
技術士と博士の定義
技術士は『国家資格』
技術士とは文部科学省が認定している科学技術に関する「国家資格」です。
技術士を取得することで、科学技術に関する高い専門知識や問題解決能力、コミュニケーション能力をもっていることが証明されます。
技術士は技術士法で以下のように定義されています。
技術士法第32条第1項の登録を受け、技術士の名称を用いて、 科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、 設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者
引用:技術士法 第2条 第1項
簡単に言うと、技術士は国から認められた高度な技術者ということですね
技術士についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
博士は『学位』
博士とは日本における最高位の「学位」です。
博士を取得することで、高い研究能力を持ち審査に合格した博士論文を書いたことがあることを証明できます。
「博士」に似た言葉として「学士」や「修士」がありますが、そちらは以下のような違いになります。
- 学士=4年制大学を卒業
- 修士(マスター)=学士に加えて、大学院で2年間の研究を行った
- 博士(ドクター)=修士に加えて、更に3年以上の研究を行い博士論文が認められた
「学士」⇒「修士」⇒「博士」とどんどんランクアップしていくイメージですね。
例外として、6年生の医学部は修士相当として扱われるなどもありますが、概ねこのように認識していれば間違いありません。
技術士と博士の役割
技術士は産業界で、博士は学術界で科学技術の発展のために日々努力します。
いわば車両の両輪のようなもので、日本の科学技術の発展のためには技術士も博士もなくてはならないものです。
そのため、技術士と博士には「どちらが優れている」とか「どちらが難しい」といった上下関係はありません。
学理を開発した学者には博士、技術を産業界に応用する能力を有すると認められた技術者には技術士という称号が与えられる。わが国の科学技術の発展に博士と技術士は車両の両輪となって寄与することを期待する。
引用:土光敏夫 経済団体連合会(経団連)第4代会長
技術士と博士の知名度の違い
日本の科学技術にとっての両輪である「技術士」と「博士」ですが、その知名度は大きく異なります。
博士の知名度は高い
博士はアニメや映画などで博士キャラがいるぐらい様々な物で扱われており、小学生でもイメージできるくらい知名度があります。
- 阿笠博士(名探偵コナン)
- オーキド博士(ポケットモンスター)
- エメット・ブラウン博士=通称ドク(バックトゥザフューチャー)
※実際の博士がこのイメージ通りかはまた別の話ですが…
「博士です」と言ったら「すごい!頭いいんだね」となるでしょう。
技術士の知名度は低い
一方で、技術士は一般的な知名度はほとんどありません。
「技術士です」と言っても「へぇーなにそれ」で終わるでしょう。
アニメや映画でも技術者っぽいキャラはいますが、技術士という名称が使われることはありません。
- フランキー(ワンピース)
- シド(ファイナルファンタジー)
- 佃航平(下町ロケット)
- ガンダム等のロボットアニメ全般に出てくるメカニック
なんだったら、どちらかといえば技術士っぽいのに博士と呼ばれているケースもあります。
キムタクドラマ『Believe―君にかける橋―』でも技術士の名前は使われなかった
2024年3月、技術士の知名度が低いことを象徴するかのような出来事がありました。
それは、木村拓哉さんの主演ドラマ『Believe―君にかける橋―』において、主人公の肩書が「建築士」から「設計者」に変更されたということですね。
経緯を表すと以下のようになります。
- 木村拓哉さんの演じる人物について
「大手ゼネコンに所属し、橋づくりに情熱を燃やす建築士・狩山陸」
とドラマの公式サイトで解説される。 - SNSなどで「通常、橋の建設に関わるのは設計なら技術士、施工なら一級土木施工管理技士では?」と指摘が相次ぐ。
- ドラマ公式サイトの表記が
「大手ゼネコンに所属し、橋づくりに情熱を燃やす設計者・狩山陸」
と変更される。
このように、主人公の肩書はがっつり技術士であろうと予想できますが、結果として技術士という肩書は使用されませんでした。
まぁ、技術士の知名度は低いですから、技術士よりも設計者という肩書の方が視聴者がイメージしやすいと判断したのでしょう。
このようなところからも技術士の知名度の低さがわかります。
技術士と博士はどちらが就職で有利か
技術士は産業界で、博士は学術界で活躍するという性質上、一概に技術士と博士のどちらが就職で有利かということは大変難しいです。
私としては、
・一般企業に勤めたいなら、学部卒か院卒で就職し経験を積んだら技術士を取得する
・大学や公的機関に勤めたいなら、学士⇒修士⇒博士と課程を修了したら大学などのポストドクターとして働く
とするのがストレートで分かりやすくて無駄もないと思います。
もちろん、産業技術研究所のような公的機関に技術士の方もいますし、一般企業の求人で博士卒も募集するようなところも多くあります。
しかし、大学や公的機関は博士であることが前提の求人ばかりですし、一般企業の求人で博士卒となると年齢や実務経験の年数がネックになってきます。
これらのマイナス要因をひっくり返すほどの要因があれば良いですが、ほとんどの人にとっては「一般企業なら技術士」「大学や公的機関なら博士」という流れに乗るのが一般的かなと思います。
まとめ
技術士と博士の違いについて解説しました。
技術士と博士は、日本の科学技術の発展にとって両方ともなくてはならないものです。
本記事では技術士と博士を比較しましたが、どちらが優れているだとか重要だとかいうものではありません。
技術士は産業界で、博士は学術界でそれぞれ活躍し、日本の科学技術をより発展させていきたいものです。
コメント