科学技術が関係する業界では技術革新のスピードが早く、業界で働く技術者はスキルアップは欠かせません。
資格取得はスキルアップのひとつの方法として有効です。
このように、資格取得を目指して勉強することで技術や知識を体系的に身につけることができます。
また、資格取得の過程で、実務で役立つ知識やスキルを身につけることができることもあります。
しかし、資格取得が必ずしもスキルアップにつながるわけではありません。
自分にとって必要な資格を正しく選ぶことが出来なければ、勉強時間や受験費用などを無駄にしてしまうでしょう。
そこで、本記事では理系社会人として働く技術者に向けて、スキルアップにおすすめの資格を紹介します。
役に立つ資格がある一方で役に立たない資格というのも当然あります。
大事なのは自分にとってどの資格が有効なのかです。しっかり見極めましょう。
技術者の資格の選び方
技術者のスキルアップに資格は必要か
科学技術業界は技術革新が早く、技術者はスキルアップが欠かせません。
資格取得はスキルアップのひとつの方法として有効ですが、必ずしも必要というわけではありません。
メリットデメリットを踏まえて、資格を取得するかを検討しましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
スキルや知識の客観的な証明になる キャリアアップや転職に有利になる 給与アップにつながる 仕事の幅が広がる | 勉強に時間や費用がかかる 必ずしも実務に直結しない |
おすすめの資格を選ぶポイント
資格取得を目指す際には、以下のポイントを押さえるとよいでしょう。
自分のスキルや経験に合ったものを選ぶ
資格には、幅広い分野やレベルのものがあります。自分のスキルや経験に合っていない資格を取得しても、効果的なスキルアップにはつながりません。
例えば、未経験のエンジニアが、いきなり高度な技術を扱う資格を取得しても、十分に活用できません。まずは、基礎的な知識やスキルを身につけるための資格から取得するのがよいでしょう。
取得するメリットを明確にする
資格取得の目的は、スキルアップやキャリアアップ、転職などさまざまです。取得するメリットを明確にすることで、モチベーションを維持しやすくなります。
例えば、スキルアップを目的とする場合は、自分のスキルや経験を補完するような資格を選ぶとよいでしょう。キャリアアップや転職を目的とする場合は、企業で重宝されるような資格を選ぶとよいでしょう。
難易度や取得までの期間を把握する
資格には、難易度や取得までの期間が異なります。無理のない計画を立てるために、事前に難易度や取得までの期間を把握しておきましょう。
例えば、独学で勉強する場合は、勉強にかかる時間を考慮して、難易度が低めで取得までの期間が短い資格から挑戦するのもよいでしょう。
理系社会人からのアンケート
理系社会人100名を対象に、スキルアップにおすすめの資格に関するアンケート調査を実施しました。
理系社会人向けアンケート「あなたがスキルアップに最適だと思う資格はなんですか?」
アンケートによると、IT系の資格が多く挙げられました。
「基本情報技術者」「ITパスポート」「応用情報技術者」のトップ3はいずれもIT系資格ですね。
また、電気工事士や建築士や危険物取扱者など、いわゆる独占業務がある資格も人気です。
総じて、業務を通じて実際にメリットがある資格というのが人気です
技術者におすすめの資格10選
ここからは、アンケート結果も踏まえて私自身がおすすめしたい技術系資格を紹介したいと思います。
技術士
技術士とは、文部科学省によって認定される国家資格です。
技術士になると「科学技術に関する高度な専門知識と応用能力、そして豊富な実務経験を持つ優れた技術者である」という証明ができます。
いわゆる名称独占の国家資格です
技術士は、科学技術に関する高度な専門的応用能力を必要とする業務を担当します。具体的には、計画、研究、設計、分析、試験、評価などの業務を行います。
公共事業の計画や設計監理、地方自治体の業務監査、技術調査や鑑定、中小企業向けの技術相談など、さまざまな分野で活躍しています。
メリット | デメリット |
---|---|
技術者としての専門性を証明できる 年収アップや転職に有利になる 社会的信用が高まる 技術士会や技術士事務所などへの入会が可能になる | 試験の難易度が高い 取得までに長い勉強時間が必要 受験料や登録料などの費用がかかる |
衛生管理者
衛生管理者は、労働者の健康を守る業務を担う国家資格です。常時50人以上の労働者が働く事業場では、必ず1人以上の衛生管理者を置くよう法律で定められています。
衛生管理者は以下のような業務を行います。
- 労働者の健康状態の調査・記録
- 労働者の健康障害の予防・防止
- 労働者の健康に関する教育・指導
- 労働衛生に関する改善策の実施
衛生管理者試験は、第一種と第二種の2種類があります。第一種は、すべての業種で衛生管理者として活動できる資格です。第二種は、特定の業種に限って衛生管理者として活動できる資格です。
第一種衛生管理者試験の合格率は約4割、第二種衛生管理者試験の合格率は約5割です。国家資格の中では比較的難易度は低いといわれています。
メリット | デメリット |
---|---|
労働者の健康を守る仕事に就くことができる 就職や転職に有利になる 資格手当が支給される場合がある 社会的信用が高まる | 試験の難易度が低いとはいえ勉強が必要 取得に費用がかかる |
危険物取扱者
危険物取扱者は、消防法で定められた危険物を安全に取扱うことができる国家資格です。
危険物取扱者は、以下の3種類に分けられます。
メリット | デメリット |
---|---|
危険物の取扱い業務に就くことができる 就職や転職に有利になる 資格手当が支給される場合がある 社会的信用が高まる | 甲種・乙種は難易度がそれなりにある 取得に費用がかかる |
ITパスポート
ITパスポートはITに関する基礎的な知識を証明する国家資格です。
ITを利活用するすべての学生、社会人向けの試験とされています。
ITパスポート試験の合格率は、近年では約50%前後です。
国家試験の中では比較的難易度は低いといわれており、コスパの良い資格であるといえるでしょう。
メリット | デメリット |
---|---|
ITに関する基礎知識があることを証明できる 就職や転職に有利になる 大学で単位取得ができる場合がある 資格手当が支給される場合がある 社会的信用が高まる | 他のIT系国家資格と比べると専門性が低い 就職や転職で必ず有利になるわけではない |
基本情報技術者
基本情報技術者試験はITに関する基礎的な知識と応用力を身につけたことを証明する国家資格です。
基本情報技術者はITエンジニアの登竜門として位置づけられており、IT業界で働きたい人はぜひ取得しておきたい資格です。
基本情報技術者資格を取得することでITに関する基礎知識と応用力を証明でき、就職や転職に有利になります。
基本情報技術者試験の合格を目指すためには、しっかりとした勉強が必要です。
独学で勉強する人もいますが、通信講座やスクールに通って勉強するのもおすすめです。また、過去問を解いて傾向を把握することも重要です。
メリット | デメリット |
---|---|
ITに関する基礎知識と応用力を証明できる IT業界で就職や転職に有利になる 資格手当が支給される場合がある 社会的信用が高まる | 試験の難易度が若干高い 取得に費用がかかる |
応用情報技術者
応用情報技術者はITに関する応用的な知識と技能を身につけたことを証明する国家資格です。
応用情報技術者は基本情報技術者の上位資格に位置づけられています。
試験ではITに関する応用的な知識と技能を問われます。
ITに関する知識と経験がないと、難易度が高いと感じるでしょう。また、ITに関する知識と経験がある人でも合格するためにはしっかりと勉強する必要があります。
メリット | デメリット |
---|---|
ITに関する応用的な知識と技能を証明できる IT業界で就職や転職に有利になる 資格手当が支給される場合がある 社会的信用が高まる | 試験の難易度がかなり高い 取得に費用がかかる |
電気工事士
電気工事士は電気工事に関する専門知識と技能を有し、電気工事を行うことができる人材を認定する国家資格です。
電気工事士は電気工事を行うための必須の資格であり、例えばビルメンならほぼ必ず必要になります。
電気工事士資格を取得することで電気工事の仕事に就きやすくなり、就職や転職にも有利になります。
メリット | デメリット |
---|---|
電気工事を行うことができる 就職や転職に有利になる 資格手当が支給される場合がある 社会的信用が高まる | 試験の難易度が若干高い 取得に費用がかかる |
ボイラー技士
ボイラー技士は、ボイラーに関する基礎的な知識と技能を有することを認定する国家資格です。
ボイラー技士を取得すると、ボイラー(蒸気発生装置)の運転・保守・整備を行うことができるようになります。
どのサイズのボイラーを扱うことができるかは資格の種類によります。
特級ボイラー技士 | 一級ボイラー技士 | 二級ボイラー技士 | |
---|---|---|---|
伝熱面積500m^2以上 | 取り扱いOK 作業主任者OK | 取り扱いOK 作業主任者NG | 取り扱いOK 作業主任者NG |
伝熱面積500m^2未満 伝熱面積25m^2以上 | 取り扱いOK 作業主任者OK | 取り扱いOK 作業主任者OK | 取り扱いOK 作業主任者NG |
伝熱面積25m^2未満 | 取り扱いOK 作業主任者OK | 取り扱いOK 作業主任者OK | 取り扱いOK 作業主任者OK |
例えば二級ボイラー技士なら伝熱面積が25m^2未満のボイラーの作業主任者となれます
二級ボイラー技士試験の合格率は、近年では約50%前後です。
国家資格の中では比較的難易度は低いといわれています。
メリット | デメリット |
---|---|
ボイラーの運転・保守・整備を行うことができる 就職や転職に有利になる 資格手当が支給される場合がある 社会的信用が高まる | 試験の難易度が若干高い 取得に費用がかかる |
電気主任技術者
電気主任技術者は電気設備の安全な運転・保守・管理を行うことができる人材を認定する国家資格です。
電気主任技術者は電気設備の安全を守るために必要な資格です。
電気主任技術者資格を取得することで電気設備の安全管理に携わる仕事に就きやすくなり、就職や転職にも有利になります。
電気主任技術者試験は電気設備に関する専門的な知識と技能を問う試験です。電気設備に関する知識と経験がないと、難易度が高いと感じるでしょう。
メリット | デメリット |
---|---|
電気設備の安全な運転・保守・管理を行うことができる 就職や転職に有利になる 資格手当が支給される場合がある 社会的信用が高まる | 試験の難易度が高い 取得に費用がかかる 資格取得後の継続教育が必要 |
弁理士
弁理士は特許、実用新案、意匠、商標などの工業所有権の取得・行使に関する法律事務を行うことができる人材を認定する国家資格です。
弁理士は知的財産を守るために重要な資格です。
弁理士資格を取得することで知的財産に関する法律事務に携わる仕事に就きやすくなり、就職や転職にも有利になります。
弁理士試験は工業所有権に関する専門的な知識と技能を問う試験です。
工業所有権に関する知識と経験がないと難易度が高いと感じるでしょう。また、工業所有権に関する知識と経験がある人でも、合格するためにはしっかりと勉強する必要があります。
弁理士試験は非常に難易度の高い国家資格として知られています。
メリット | デメリット |
---|---|
工業所有権の取得・行使に関する法律事務を行うことができる 就職や転職に有利になる 資格手当が支給される場合がある 社会的信用が高まる | 試験の難易度が高い 取得に費用がかかる 資格取得後の継続教育が必要 |
他にも色々な資格があります
ここまで、技術者のスキルアップに役立つ資格を紹介してきました。
しかし、ここで紹介した資格以外にも役に立つ資格は沢山あります。
例えば、以下のような資格は、将来の選択肢を広げ、キャリアアップに役立つでしょう。
語学系の資格
英語や中国語などの語学系の資格は、グローバル化が進む現代において、就職や転職の際に有利になります。また、海外留学や海外勤務のチャンスにもつながります。
IT系の資格
IT系の資格は、IT化が進む社会において、さまざまな業界でニーズがあります。
また、独立や起業にも役立つ資格もあります。
本記事で紹介したITパスポートや基本情報技術者以外にも、様々なIT系資格があります。
実用理科技能検定
実用理科技能検定は日本理科検定協会が実施する理科技能の検定です。
一般的に理科検定や理検と呼ばれています。
英検(実用英語技能検定)が有名ですが、あれの理科バージョンですね。
「理検1級」「理検2級」のように履歴書や内申書に記載することができますので、就職活動や大学進学などで活用できます。
マイナーな資格も
この他にも、「マイナーだけどすごい資格」というものもあります。
こちらの記事では「マイナーだけど一生食べていけるすごい資格19本」を紹介しています。
資格は、自分の将来を切り開くための大きな武器になります。
ぜひ、自分の興味や将来の目標に合わせて、資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
本記事では技術者のスキルアップにおすすめの資格を紹介しました。
技術者の資格取得はスキルアップやキャリアアップ、転職に有利になる有効な手段です。
自分のスキルや経験に合ったものを選び、取得するメリットを明確にして、無理のない計画を立てて挑戦しましょう。