技術士二次試験対策 筆記試験 問題Ⅲ(選択科目)

はじめに

問題Ⅲについて金属部門を中心に記載します。
この問題の出題内容や評価項目は日本技術士会ホームページの「技術士第二次試験受験申込案内」で公開されています。ただ、公開されている内容はなかなかにお堅い表現になっており、分かりにくいところがあるかと思います。
そこで、本ページでは出来るだけかみ砕いて分かりやすく表現するようにしています。一方で、見る人によっては「説明が足りないのでは?表現がおかしいのでは?」と思われる可能性もあると思います。また、あくまでも私の解釈であり、「試験管の真意は絶対こうだ、間違いない」というものではありません。
試験対策は人それぞれですので、参考にできるところは参考にするというスタンスでお読みください。

出題傾向と評価項目

選択科目についての問題解決能力と課題遂行能力を問われる問題です。
現代社会が抱えている問題をひとつテーマとして挙げ、それに対してどのように問題を解決していくかということを問われる問題です。
問題の特徴として、「①現状の問題を多様な視点で抽出し」「②最も重要と考える問題を挙げそれを解決するための対策案を挙げ」「③対策案を実行する際のリスクやそれに対する注意点を挙げる」といったロジックに沿って解答させるという特徴があります。

この問題で評価される項目として「専門的学識」「問題解決」「評価」「コミュニケーション」が挙げられています。
この問題で評価されるポイントをかみ砕いて説明すると、
「技術的な専門知識はちゃんと理解していますか?(専門的学識)」
「問題を明確にして、分析し、実行可能な対策案を提示することができますか?(問題解決)」
「問題や対策案の成果やリスクを検討することができますか?(評価)」
「分かりやすく説明できますか?(コミュニケーション)」
といったことが評価されます。ここではかみ砕いた表現にとどめますが、もう少し具体的な求められるポイントを次項に記載していきます。

A評価解答事例

A評価の解答事例を例に挙げて解説します。

令和元年度二次試験 (金属部門表面技術) 問題Ⅲ-1
<問題文>

RoHS指令は現在各種産業分野の環境規制に及んでいる。本規制が我が国の製造業に与える影響は計り知れないものがある。このような状況を踏まえて金属表面処理の技術者として以下の問いに答えよ
(1)RoHS指令発令後の製造技術や製品設計の変更に当たって、技術者としての立場で多面的な観点で課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)あなたの技術的提案の効果及び潜在的に持っている不確実性あるいはリスクについて、具体的に論述せよ。
<解答(A判定)>

(1)RoHS指令発令後の製造技術や製品設計の変更における課題。
①特性面の課題:製造技術や製品設計の変更により、製品の持つ特性が低下してしまう可能性がある。例えば、近年では鉛入りはんだに代わり鉛フリーはんだが使用されているが、鉛入りはんだでは発生しなかったウイスかという現象が鉛フリーはんだでは発生するようになってしまった。製造技術や製品設計の変更をしても、極力特性が低下しないようにする必要がある。
②コスト面の課題:RoHS指令では6種類(RoHsⅡでは10種類)の材料が有害物質として指定され、製品に規定値以上含有されないことが求められている。そのため、製品設計の変更時には上記の有害物質を使わず代替品となる材料を使用することが多い。しかし、現状では代替品となる材料は比較的高価な傾向にあり、製品としてのコスト増加につながる。RoHS指令に対応しながらも同等のコスト、あるいは低コストな製品設計が求められている。
③環境面の課題:上述の通り、RoHS指令では指定した有害物質が製品に含有しないことが望まれているが、製造現場でも有害物質を使用しないようにする取組が行われている。例えば、硬質クロムめっきの製造現場では従来六価クロムの浴が使用されてきたが、六価クロムはRoHS指令で有害物質に指定されている。このため、六価クロム浴に代わり三価クロム浴を用いた硬質クロムめっきの実用化が進められている。しかし、現状では三価クロム浴は排液処理が困難であり、処理時に必要な電力消費も大きい。有害物質を使用しないという利点はあるが、排液処理や消費電力といった他の環境側面で問題を抱えており、更なる低環境負荷な表面処理技術が望まれている。

(2)最も重要な課題とその解決策
上述した課題のうち、③環境面の課題が最も重要であると私は考える。なぜなら、近年では持続可能な開発への意識が国際的に高まっており、特性やコスト面で優れていても環境面への配慮に欠けた製品は求められないと考えるためである。
課題に対する解決策を以下に記載する。
a)乾式めっきへの移行:真空蒸着やスパッタリング等、処理液を必要としない、つまり排液処理も不要な乾式めっきを適用する。例えば、六価クロムによる硬質クロムめっきはスパッタリングで直接クロムを成膜する技術開発を行いそれに移行する。あるいは、高い硬度を求めるだけなら、既存技術である窒化チタンの成膜等も考えられる。
b)他の材質のめっきでの代用:六価クロム浴を使用することで問題にされることの多い硬質クロムメッキは、基材に高い硬度や摩擦係数の低減を目的として適用されることが多い。しかし、本来硬質クロムめっき程の硬度(約1000HV)は必要なくそれよりも低い硬度でも問題ない用途でも硬質クロムめっきが適用されているケースも多い。そのような物に対しては、硬質クロムめっきほどではないが高高度なニッケルめっき(600HV)やアルマイト(200~600HV)等で代用することも対策として挙げられる。ニッケルめっきやアルマイトは製造工程においてもRoHS指令で指定される有害物質を使用しておらず、より低環境負荷な表面処理技術であると言える。

(3)技術的提案の効果及び不確実性あるいはリスク
a)乾式めっきへの移行
・効果
 乾式めっきは処理液を必要としないため、湿式めっきと比較して極めて環境に優しい処理方法である。
・不確実性あるいはリスク
乾式めっきには真空技術を利用したものが多くある。その性質上真空容器が必要となり、処理可能な基材のサイズに制約が生じる
b)他の材質のめっきでの代用
・効果
 既存技術で代用可能な条件であれば、技術開発の必要もなくすぐに実行でき、直ちに低環境負荷の製品が出来上がる。
・不確実性あるいはリスク
 特性が低いもので代用する場合、必要な仕様の調査が充分でないと不具合発生の恐れがある。

解説

技術士二次試験において最もハードルの高い問題であるとされています。専門知識があるだけでは合格点をもらうことが出来ません。普段から多様な視点で物を考えることやロジカルな文章の書き方など訓練しておく必要があります。

解答するにあたっていくつかポイントがありますので、それぞれ具体的に解説していきます。

①全体的なこと ~問題文に合わせて解答を構成する~
問題文は「(1)○○について述べよ。 (2)△△について述べよ。 (3)~~について述べよ。」というように3つの設問から構成されていますので、これに合わせて「(1)○○、 (2)△△、 (3)~~」という形で解答を構成します。ここで見出しを活用することが有効です。
逆に言えば、勝手に問題文とは異なる番号や内容で見出しを付けて解答してしまうと採点者にとって読みにくい解答となり、「コミュニケーション」能力が不十分と判断されかねません。それでもA判定を得られている事例もあるようですが、ここでは素直に設問に合わせた番号と内容で見出しを付けて回答することをお勧めします。


②社会的なテーマに関して知識を蓄える
この問題では社会的なテーマを挙げられ、それに対して解答することが求められます。よって、まず大前提として「現代社会(日本)が抱えている社会的な問題」について普段から興味を持って知識を蓄えておく必要があります。出題されそうなテーマを以下に記載します。これらのテーマについて国が公開している白書(科学技術白書や国土交通白書)に目を通して、自分が選択した部門に該当しそうな内容について大枠を理解し、更に各種専門誌やネット情報を駆使して知識を深めていくことが必要です。

 <社会的テーマのキーワード>【2020年時点】
 ・ものづくりにおける生産性向上、付加価値向上、国際競争力の強化
 ・ものづくりにおける環境への配慮
 ・高齢社会(超高齢社会)
 ・働き方改革
 ・AI、ICT、IoT技術の利活用
 ・後継者不足における技術継承
 ・SDGs


③問題の抽出は多様な視点で
設問1では社会的なテーマの枠の中で現代社会が抱える問題を抽出させるケースが多いです。設問1でなくとも、設問中のどこかのタイミングで問題を抽出する必要があるはずです。
この時、抽出する問題は多様な視点から抽出する必要があります。例えば、ものづくりでは考慮するべきことに「品質」「コスト」「環境」「生産性」「労働安全衛生」「信頼性」など多数のことを考慮する必要があります。抽出した問題が品質にかかわることばかりで、コストや環境に関わることは全く触れていないというのはNGというわけです。もちろん全ての項目について解答するのは回答用紙のスペース上無理なことですので、多様な視点を持っていますよというアピールが出来る程度、概ね3項目程度を記載すれば良いかと思います。

この「多様な視点」は技術士会が公開している「技術士二次試験 受験申込案内」の中で明確に記載されています。ここは間違いなく出来るようにしておくべきポイントです。


④最も重要な課題として挙げるべきは、問題文にヒントがある
解答例では、設問1で「品質」「コスト」「環境」の3つの視点から問題を抽出しています。設問2では「これらのうち最も重要な課題をひとつ挙げ」と記載しています。ここで挙げるべき課題として最も適切なものは何か?それは問題文に記載されています。
解答例の設問ではRoHS指令をテーマにしています。RoHS指令は「製品に有害な物質を含んではいけませんよ」というもの、つまり「環境」に関わるものであり、この設問は「環境」をテーマにしたものであると言えます。よって、ここで挙げるべき課題は「環境」の視点から抽出したものと考えます。

普段の仕事においては「私は最も重要な課題は品質だと思う!」という方もいると思いますし、実際に重要な課題というものは状況や製品等により変わるものだと思います。しかし、試験では「このテーマのもとで考えるなら」という観点で解答すると評価に繋がると考えます。


⑤提示する対策案は実行性のあるものを
設問の中で重要な課題を挙げたら、次はそれを解決するための対策案の提示を求められます。ここで提示する対策として注意しなければならないのは、実行可能な、現実的な案を提示することです。
この設問は「問題解決能力及び課題遂行能力」が問われますので、あまりにも突拍子もなく実行できないだろうと思われる対策案を提示してしまうと課題遂行能力に問題ありとされる可能性があります。実行可能性という点に着目して対策案を提示すると良いでしょう。

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