- 解答論文ってどう書くの?
- 二次筆記試験の過去問の模範解答をみたい
- 解答論文を書くポイントを知りたい
技術士二次試験の筆記試験は論文式の試験です。
択一式の試験と違い、論文式の試験には明確な正解がありません。
論文試験では、まずは模範解答を読むことが非常に重要です。どのような論文を書けば合格できるかが分からない限り、どんなに自力で練習したところで合格することはできません。
そこで、本記事では私が技術士試験に合格した時の解答論文を
『技術士二次試験 筆記試験 問題Ⅰ』の模範解答例として紹介します。
併せて、解答するにあたり必要になるポイントの解説も紹介します。
本記事で紹介するのは、私が実際に技術士試験を受験してA判定を取った解答論文です。
試験の翌日に解答論文の再現をしたので試験当日に実際に解答したものとは細かい部分が異なるかもしれませんが、内容としては概ね再現出来ているかと思います。
いわゆる過去問の解答例という形になりますね。
なお、受験部門は『金属部門(表面技術)』になります。
部門の違いはあっても試験に必要になる考え方は同じですので、ある程度参考にできるはずです。
ぜひ、この解答例を参考にしてみてくださいね
その他の模範解答例と解答のポイント解説はこちら
模範解答例 問題Ⅱ-1
模範解答例 問題Ⅱ-2
模範解答例 問題Ⅲ
筆記試験の模範解答例(A評価)
さっそく模範解答を紹介します。
解説ー論文を書くポイント
いかがでしょうか。
意外と「こんな簡単なことしか書いてなくて良いの?」「中身薄くない?」と思うかもしれませんね(笑)
これはそう思われるよう狙って書いています。
解答するにあたっていくつかポイントがありますので、それぞれ具体的に解説していきますね。
読みやすい構成にする(問題文に合わせて見出しをつける)
読みやすい解答論文とするために、
「問題文に合わせて見出しをつける」
というテクニックを使うと良いです。
問題文は
(1)○○について述べよ。
(2)△△について述べよ。
(3)~~について述べよ。
(4)□□について述べよ
というように4つの設問から構成されています。
読みやすい解答論文にするためには、
(1)○○
(2)△△
(3)~~
(4)□□
というように見出しを問題文に合わせて解答を構成します。
逆に言えば、勝手に問題文とは異なる番号や内容で見出しを付けて解答してしまうと採点者にとって読みにくい解答となり、「コミュニケーション」能力が不十分と判断されかねません。
それでもA判定を得られている事例もあるようですが、ここでは素直に設問に合わせた番号と内容で見出しを付けて回答することをお勧めします。
採点者が採点しやすい解答論文にするのがポイントです
課題を挙げる際は多様な視点で書こう
設問1では社会的なテーマの枠の中で現代社会が抱える問題を抽出させるケースが多いです。
設問1でなくとも、設問中のどこかのタイミングで問題を抽出する必要があるはずです。
この時、抽出する問題は多様な視点から抽出する必要があります。
例えば、ものづくりにおいては以下のようなことを考慮する必要があります。
- 品質
- コスト
- 環境への影響
- 生産性
- 労働安全衛生
- 信頼性
例えば、抽出した問題が品質にかかわることばかりでコストや環境に関わることは全く触れていないというのは多様な視点という観点的にNGというわけです。
ただ、全ての項目について解答するのは解答用紙のスペース上無理なことです。
そこで、実際に解答するのは「多様な視点を持っていますよというアピールが出来る程度(概ね3~4項目程度)」を記載すれば良いかと思います。
実際にどの項目を挙げれば良いかは問題文によりますが、「多様な視点を持っている感」をアピール出来るような項目選びができると良いですね。
この「多様な視点」は技術士会が公開している「技術士二次試験 受験申込案内」の中で明確に記載されています。ここは間違いなく出来るようにしておくべきポイントです。
「多様な視点を持ってますよ」とアピールすれば良いんだね!
最も重要な課題として挙げるべき項目は、問題文から読み取る
ここはちょっと難しいポイントです。
いわゆる「題意に沿って」というやつですが、人によっては、あるいは問題文によっては難しい場合があります。
さて、紹介した解答例では設問1で
「品質」
「コスト」
「環境」
「技術継承」
の4つの視点から問題を抽出しました。
そして、設問2では「抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。」と問われています。
ここで、私の解答例では「最も重要な課題は『技術承継』」としているのですが、
正直なところ本当に「最も重要な課題」だと思って『技術継承』を挙げたわけではありません。
なぜ最も重要な課題として『技術継承』を選んだのか。
それは問題の意図を読み取ったから(空気を読んだから)です。
は?意味わかんないんだけど
ちゃんと説明しますね
設問では
「①技術の継承をしつつ」
「②既存材料の特性を凌ぐ新しい金属材料を開発しなければならない」
と記載されています。
つまり、この設問は『技術継承』もしくは『新材料の開発』をテーマにしたものであると言えます。
問題作成者としては『技術継承』もしくは『新材料の開発』について解答させたいという意図があるでしょうから、ここでは『技術継承』もしくは『新材料の開発』の視点から抽出した課題を「最も重要な課題」として解答するべきだと考えました。
なお、設問2でこの課題を挙げるためには設問1で「技術継承」もしくは「新材料の開発」を挙げておかなければなりません。
解答を書き始める前の全体構成を考える時点で、このあたりのことも考慮しておかなければならないのが技術士試験の難しいところですね。
ちなみに、普段の仕事においては「私は最も重要な課題は『品質』だと思う!」という方もいると思いますし、実際に重要な課題というものは状況や製品等により変わるものだと思います。
しかし、技術士試験では「このテーマのもとで考えるなら」という観点で解答すると評価に繋がると考えます。
提示する対策案は「採点者が納得しやすいもの」かつ「実行性のあるもの」
設問の中で重要な課題を挙げたら、次はそれを解決するための対策案の提示を求められます。
ここで提示する対策案としては、以下の2点を配慮しながら解答すると良いかと思います。
まずひとつは、「採点者にとって納得しやすい対策案」であることです。いかに優れた対策案だとしても、それが独創的過ぎて採点者に理解されないと得点には繋がりにくいと思われます。
ここで参考になるのが国が発行している文書です。
例えば、中小企業庁が発行している「特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」では表面処理技術に関する課題やその対策方針が示されいます。
本記事の解答事例の対策案もそれに則って記載したものです。
他にも、文部科学省の「科学技術白書」や国土交通省の「国土交通白書」等、自分の分野に該当しそうな文書を見つけて一読しておくと対策案を出しやすいかと思います。
ふたつめは、「実行可能・現実的な対策案」であることです。
この設問は「問題解決能力及び課題遂行能力」が問われますので、あまりにも突拍子もなく実行できないだろうと思われる対策案を提示してしまうと課題遂行能力に問題ありとされる可能性があります。
実行可能性という点に着目して対策案を提示すると良いでしょう。
ちゃんと達成できる見込みがある対策案が良いですね
最後に倫理観と社会持続性への配慮を記載する
設問4で
「技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ」
というものがありますが、これは2019年度から追加されるようになった設問です。
「技術者としての倫理」については、技術士の倫理網領に基づいて記載すれば良いかと思います。
本記事の解答事例では、作業者にセンサを取り付ける場合は健康への配慮や精神面のケアをするということで技術者倫理をアピールしています。(もう少し上手い解答の仕方があったかもしれませんが)
「持続可能性」については、解答事例では少子高齢化に触れて今後も社会生活を続けていくためにはどうすればよいかということを記載しています。
他にも、SDGs(持続可能な開発目標)を踏まえて記載するのも良いかと思います。
社会的なテーマに関して知識を蓄えておく
最後に、解答論文を書くために必要になる前提の知識を紹介します。
問題Ⅰは、社会的なテーマを挙げてそれに対して解答することが求められます。
そのため、まず大前提として「現代社会(日本)が抱えている社会的な問題」について普段から興味を持って知識を蓄えておく必要があります。
出題されそうなテーマを以下に記載します。
これらのテーマについて国が公開している白書(科学技術白書や国土交通白書)に目を通して、自分が選択した部門に該当しそうな内容について大枠を理解し、更に各種専門誌やネット情報を駆使して知識を深めていくことが必要です。
問題Ⅰの出題傾向と評価項目
問題Ⅰは度々出題形式が変更されており、2012年度までは記述問題、2013年度から2018年度までは5択から回答を選ぶ択一問題、そして2019年度からはまた記述問題へと変更されています。
記述問題と択一問題、どちらが簡単かというのは人により得意不得意もあるでしょうから一概には言えません。
しかし、どうやら記述問題は問題Ⅲと並んで難関な問題であるという声が多いようですし、私もそう思います。
問題Ⅰは技術部門全般にわたっての問題解決能力と課題遂行能力を問われる問題です。
現代社会が抱えている問題をひとつテーマとして挙げ、それに対してどのように問題を解決していくかということを問われる問題です。
問題の特徴として、
「①現状の問題を多様な視点で抽出し」
「②最も重要と考える問題を挙げそれを解決するための対策案を挙げ」
「③対策案を実行する際のリスクやそれに対する注意点を挙げる」
といったロジックに沿って解答させるという特徴があります。
この問題で評価される項目として「専門的学識」「問題解決」「評価」「コミュニケーション」が挙げられています。
この問題で評価されるポイントをかみ砕いて説明すると、
「技術的な専門知識はちゃんと理解していますか?(専門的学識)」
「問題を明確にして、分析し、実行可能な対策案を提示することができますか?(問題解決)」
「問題や対策案の成果やリスクを検討することができますか?(評価)」
「分かりやすく説明できますか?(コミュニケーション)」
といったことが評価されます。ここではかみ砕いた表現にとどめますが、もう少し具体的な求められるポイントを次項に記載していきます。
技術士二次試験において問題Ⅲと並んでハードルの高い問題であるとされています。専門知識があるだけでは合格点をもらうことが出来ません。普段から多様な視点で物を考えることやロジカルな文章の書き方など訓練しておく必要があります。
まとめ
本記事では問題Ⅰの模範解答例を紹介し、併せて解答のポイントについて解説しました。
模範解答だけでなく、その解答を書くに至るポイントも含めてまとめましたので
部門が違う方にとってもある程度の参考にはなるかなと思います。
一方で、ここで紹介したポイントをしっかり活用できているかはきちんと確認しておく必要があります。
自分で書いた解答論文が合格点に至っているかは自分ではなかなか評価出来ませんので、必ず同じ会社の技術士や技術士対策講座の講師に添削してもらうようにしてください。
まだ講座を決めていないという方はこちらの記事を参考にしてください。
技術士二次試験対策講座おすすめ3選【徹底比較】
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