技術士二次試験対策 筆記試験 問題Ⅰ(必須科目)

はじめに

問題Ⅰについて金属部門を中心に記載します。
この問題の出題内容や評価項目は日本技術士会ホームページの「技術士第二次試験受験申込案内」で公開されています。ただ、公開されている内容はなかなかにお堅い表現になっており、分かりにくいところがあるかと思います。
そこで、本ページでは出来るだけかみ砕いて分かりやすく表現するようにしています。一方で、見る人によっては「説明が足りないのでは?表現がおかしいのでは?」と思われる可能性もあると思います。また、あくまでも私の解釈であり、「試験管の真意は絶対こうだ、間違いない」というものではありません。
試験対策は人それぞれですので、参考にできるところは参考にするというスタンスでお読みください。

出題傾向と評価項目

問題Ⅰは度々出題形式が変更されており、2012年度までは記述問題、2013年度から2018年度までは5択から回答を選ぶ択一問題、そして2019年度からはまた記述問題へと変更されています。記述問題と択一問題、どちらが簡単かというのは人により得意不得意もあるでしょうから一概には言えませんが、どうやら記述問題は問題Ⅲと並んで難関な問題であるという声が多いようですし、私もそう思います。

問題Ⅰは技術部門全般にわたっての問題解決能力と課題遂行能力を問われる問題です。
現代社会が抱えている問題をひとつテーマとして挙げ、それに対してどのように問題を解決していくかということを問われる問題です。
問題の特徴として、「①現状の問題を多様な視点で抽出し」「②最も重要と考える問題を挙げそれを解決するための対策案を挙げ」「③対策案を実行する際のリスクやそれに対する注意点を挙げる」といったロジックに沿って解答させるという特徴があります。

この問題で評価される項目として「専門的学識」「問題解決」「評価」「コミュニケーション」が挙げられています。
この問題で評価されるポイントをかみ砕いて説明すると、
「技術的な専門知識はちゃんと理解していますか?(専門的学識)」
「問題を明確にして、分析し、実行可能な対策案を提示することができますか?(問題解決)」
「問題や対策案の成果やリスクを検討することができますか?(評価)」
「分かりやすく説明できますか?(コミュニケーション)」
といったことが評価されます。ここではかみ砕いた表現にとどめますが、もう少し具体的な求められるポイントを次項に記載していきます。

A評価解答事例

A評価の解答事例を例に挙げて解説します。

和元年度二次試験 (金属部門表面技術) 問題Ⅲ-1
<問題文>

金属材料製造における主要技術の多くは、生産現場の経験の蓄積に基づいて改善されてきた。
国際競争力強化へ向けた新展開を図るためには、従来の技術を承継しつつ、新たな概念に基づく更なる生産技術・プリセスの硬度かも不可欠となる。
また、既存材料の特性を凌ぐ新しい金属材料の開発も視野に入れていかなければいけない。上記の状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)構造材料を対象として、新たな生産技術・プロセスや新材料を検討するうえで、技術者としての立場で多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、あなたの専門技術を踏まえて考えを述べよ。
(4)上記事項を業務として遂行するにあたり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
<解答(A判定)>

(1)新たな生産技術・プロセスや新材料を検討する上で考えられる課題
 考えられる課題を以下に記載する。
①特性面の課題:我が国の国際競争力強化のためには、より高強度なものやより軽量なものなど、従来よりも高い特性をもつ材料の開発が必要である。
②コスト面の課題:競争力強化のためには、従来の特性を維持したまま更に低コスト化することも求められる。生産技術・プロセスを高度化し、より低コストに材料を生産することが必要である。
③環境面の課題:近年では国際的な環境保全への意識の高まりから、環境に優しいものづくりが求められている。良好な特性や低コストを実現しつつ、鉛や六価クロムなどの有害物質を使用しないなど、環境への配慮も両立したものづくりが必要である。
④技術承継面の課題:現在の生産現場では、一担当者レベルの暗黙知と言える技術が多く存在する。その技術が充分に承継されないまま労働者が引退し、暗黙知な技術が失われつつある。これを防ぐために、暗黙知な部分も含めた技術承継が必要である。
(2)最も重要と考える課題と、それに対する解決策
 上述した課題のうち、私は④技術承継面の課題が最も重要と考える。なぜなら、近年では少子高齢化が急速に進んでいることから労働者の平均年齢が上昇を続けている背景があるため、技術が失われてしまう危機が最も差し迫っていると考えるからである。そこで、上記課題に対する解決策を以下に列挙する。
a)マニュアルや手順書の整備:暗黙知も含めた技術をマニュアルや手順書などの書類に残すことで、後生に技術を承継する。
b)OJTの実施:熟練の作業者が教育者となり、後進の作業者に対して教育を行う。コツ・ノウハウといった部分を含めて教育することで、暗黙知な技術も承継される。
c)センサによるデータ収集:生産作業におけるパラメータや生産したものの特性をセンサによりデータ化し収集する。収集したデータを利活用し、技術を承継する。
(3)解決策に生じうるリスクと、それに対する対策
 上述した解決策に共通して生じうるリスクとして、適切に技術が伝達されないということが挙げられる。例えば、溶射作業時の手の角度など作業中のちょっとしたコツは言葉で説明しにくいといったケースや、そもそも担当者がなにげなくやっているだけで技術と認識しておらず説明がされないといったことが考えられる。
 これに対する対策として、IoT やAI技術の利活用が挙げられる。例えば、溶射等は手作業で実施することが多くあるが、作業者の腕や手に加速度センサなどのセンサを取り付けた状態で溶射作業を実施し、作業中の腕や手の角度や位置等のデータを収集し、コツを見える化することで技術承継をより確かなものにする。更には、AIやロボット技術も活用し、熟練作業者の動きを再現した溶射ロボットの開発等にも展開できる。
(4)業務遂行における必要な要件
・技術的な視点から
 作業者にセンサを取り付けるという性質上、センサは作業者の溶射作業のジャマにならない形状や生態親和性でなければならない。また、作業者のどこに、何のセンサを取り付ければ、技術を的確にデータ化することが可能かよく検討する必要がある。
・技術者倫理、社会の持続可能性の観点から
作業者にとっては自分が蓄積したコツ・ノウハウなどの技術を公開することであり、自分の技術や仕事が奪われるといった思考に至る可能性がある。作業者の協力を得るためにも、技術承継の必要性、作業者の技術の重要性、仕事を奪うわけではないといった事を伝え、作業者のフォローをよく行うことが必要である。
また、前述の通り少子高齢化が進んでいる現在では、技術承継をする後進がいないことも懸念される。社会の持続可能性を考慮し、ロボット技術の活用まで展開することが必要である。これにより労働人口減少の対策にもなる。

解説

技術士二次試験において問題Ⅲと並んでハードルの高い問題であるとされています。専門知識があるだけでは合格点をもらうことが出来ません。普段から多様な視点で物を考えることやロジカルな文章の書き方など訓練しておく必要があります。

解答するにあたっていくつかポイントがありますので、それぞれ具体的に解説していきます。

①全体的なこと ~問題文に合わせて解答を構成する~
問題文は「(1)○○について述べよ。 (2)△△について述べよ。 (3)~~について述べよ。(4)□□について述べよ」というように4つの設問から構成されていますので、これに合わせて「(1)○○、 (2)△△、 (3)~~、(4)□□」という形で解答を構成します。ここで見出しを活用することが有効です。
逆に言えば、勝手に問題文とは異なる番号や内容で見出しを付けて解答してしまうと採点者にとって読みにくい解答となり、「コミュニケーション」能力が不十分と判断されかねません。それでもA判定を得られている事例もあるようですが、ここでは素直に設問に合わせた番号と内容で見出しを付けて回答することをお勧めします。


②社会的なテーマに関して知識を蓄える
この問題では社会的なテーマを挙げられ、それに対して解答することが求められます。よって、まず大前提として「現代社会(日本)が抱えている社会的な問題」について普段から興味を持って知識を蓄えておく必要があります。出題されそうなテーマを以下に記載します。これらのテーマについて国が公開している白書(科学技術白書や国土交通白書)に目を通して、自分が選択した部門に該当しそうな内容について大枠を理解し、更に各種専門誌やネット情報を駆使して知識を深めていくことが必要です。

 <社会的テーマのキーワード>【2020年時点】
 ・ものづくりにおける生産性向上、付加価値向上、国際競争力の強化
 ・ものづくりにおける環境への配慮
 ・高齢社会(超高齢社会)
 ・働き方改革
 ・AI、ICT、IoT技術の利活用
 ・後継者不足における技術継承
 ・SDGs


③問題の抽出は多様な視点で
設問1では社会的なテーマの枠の中で現代社会が抱える問題を抽出させるケースが多いです。設問1でなくとも、設問中のどこかのタイミングで問題を抽出する必要があるはずです。
この時、抽出する問題は多様な視点から抽出する必要があります。例えば、ものづくりでは考慮するべきことに「品質」「コスト」「環境」「生産性」「労働安全衛生」「信頼性」など多数のことを考慮する必要があります。抽出した問題が品質にかかわることばかりで、コストや環境に関わることは全く触れていないというのはNGというわけです。もちろん全ての項目について解答するのは回答用紙のスペース上無理なことですので、多様な視点を持っていますよというアピールが出来る程度、概ね3~4項目程度を記載すれば良いかと思います。
この「多様な視点」は技術士会が公開している「技術士二次試験 受験申込案内」の中で明確に記載されています。ここは間違いなく出来るようにしておくべきポイントです。


④最も重要な課題として挙げるべきは、問題文にヒントがある
解答例では、設問1で「品質」「コスト」「環境」「技術継承」の4つの視点から問題を抽出しています。設問2では「これらのうち最も重要な課題をひとつ挙げ」と記載しています。ここで挙げるべき課題として最も適切なものは何か?それは問題文に記載されています。

解答例の設問では「①技術の継承をしつつ」「②既存材料の特性を凌ぐ新しい金属材料を開発しなければならない」と記載されています。つまり、この設問は「技術継承」もしくは「新材料の開発」をテーマにしたものであると言えます。問題作成者としては「技術継承」もしくは「新材料の開発」について解答させたいという意図があるのではないかと考えられます。よって、ここで挙げるべき課題は「技術継承」もしくは「新材料の開発」の視点から抽出したものと考えます。
そして当然、設問2でこの課題を挙げるためには設問1で「技術継承」もしくは「新材料の開発」を挙げておかなければなりません。解答を書き始める前に、全体の構成を考える時点でこのあたりのことも考慮しておく必要があります。

なお、普段の仕事においては「私は最も重要な課題は品質だと思う!」という方もいると思いますし、実際に重要な課題というものは状況や製品等により変わるものだと思います。しかし、試験では「このテーマのもとで考えるなら」という観点で解答すると評価に繋がると考えます。


⑤提示する対策案は「採点者が納得しやすいもの」かつ「実行性のあるもの」
設問の中で重要な課題を挙げたら、次はそれを解決するための対策案の提示を求められます。ここで提示する対策案としては、以下の2点に配慮して解答すると良いかと思います。

まずひとつは、「採点者にとって納得しやすい案」であることです。いかに優れた対策案だとしても、それが独創的過ぎて採点者に理解されないと得点には繋がりにくいと思われます。
ここで参考になるのが国が発行している文書です。例えば、中小企業庁が発行している「特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」では表面処理技術に関する課題やその対策方針が示されており、解答事例で記載している対策案はそれに則ったものです。他にも、文部科学省の「科学技術白書」や国土交通省の「国土交通白書」等、自分の分野に該当しそうな文書を見つけて一読しておくと対策案を出しやすいかと思います。

ふたつめは、実行可能・現実的な案を提示することです。
この設問は「問題解決能力及び課題遂行能力」が問われますので、あまりにも突拍子もなく実行できないだろうと思われる対策案を提示してしまうと課題遂行能力に問題ありとされる可能性があります。実行可能性という点に着目して対策案を提示すると良いでしょう。


⑥最後に倫理観と社会持続性への配慮を記載する
設問4で「技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ」というものがありますが、これは2019年度から追加されるようになった設問です。
「技術者としての倫理」については、技術士の倫理網領に基づいて記載すれば良いかと思います。解答事例では、作業者にセンサを取り付ける場合は健康への配慮や精神面のケアをするということで技術者倫理をアピールしています。(もう少し上手い解答の仕方があったかもしれませんが)
「持続可能性」については、解答事例では少子高齢化に触れて今後も社会生活を続けていくためにはどうすればよいかということを記載しています。他にも、SDGs(持続可能な開発目標)を踏まえて記載するのも良いかと思います。

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