異種金属接触腐食とは?
水中などの電気が流れやすい環境で異なる種類の金属同士を接触させると発生する腐食のことを異種金属接触腐食と呼びます。(ガルバニック腐食とも呼ばれます。)
ステンレスやアルミニウムなどの耐食性が高い金属でも発生しますので注意が必要な腐食です。
具体的な事例を挙げると、アルミ製の架台にスチール製のねじを締結した部分が雨や結露などで濡れた状態などで異種金属接触腐食が発生します。
異種金属接触腐食が発生する原理は?
異種金属接触腐食が発生する原理は「電池」です。
自然電位の異なる金属を接触させて水などの電解液に入れると電池が形成されます。
自然電位の低いアルミニウムから自然電位の高いスチールへと電気が流れ、それと供にアルミニウムがイオン化して水中へ流れ出てしまいます。
そうして、自然電位の低いアルミニウムが集中して腐食していきます。
ちなみに、上記の例では自然電位の低いアルミニウムは急激に腐食する一方で、自然電位の高いスチールはほとんど腐食しません。
このことを逆に防食として活用した方法を犠牲陽極法と言います。
よく亜鉛めっき鋼板などで活用されている方法で、亜鉛めっき鋼板では「自然電位の低い亜鉛が犠牲になって腐食する代わりに、本体である自然電位の高い鋼板はほとんど腐食しない」という原理で高い耐食性を実現しています。
犠牲陽極法については別記事で詳しく記載する予定です。
異種金属接触腐食の対策法は?
異種金属接触腐食を発生させないようにするためにはいくつか手段があります。
大きく3つに分けて、それぞれ対策法を説明していきます。
①同じ種類の金属を使用する
異種金属接触腐食は2種類の金属の電位差によるものですので、そもそも同じ種類の金属を使用すれば腐食は発生しません。
全く同じ種類の金属を使用することが難しい場合は、せめて自然電位の近い金属同士を使用することで腐食を低減することが出来ます。
この手法で全て対策できれば理想的ですが、現実的には異種の金属を使用する場面というのはどうしても出てきます。
この手法のみで全ての問題を解決することは難しいでしょう。
そのような場合は次以降に紹介する対策を行います。
②金属同士を絶縁する
異種金属接触腐食は金属同士で通電してしまうことで腐食が生じてしまいますので、金属間を電気的に絶縁するという対策も有効です。
樹脂やゴムなどの絶縁材を金属同士の間に挟むことで絶縁が可能です。
例えば、配管の接続においては絶縁用のワッシャやガスケット(フランジの接続に使用するパッキンのようなもの)が実用されています。
③環境から遮断する
最後に、金属を塗装、めっき、ライニングすることによって周囲の環境から遮断してしまうことも有効です。
周囲の環境から遮断というのは、例えば雨や結露などの水分から金属を守るということです。
「塗装のはげ」や「めっきのピンホール」があると環境から遮断できなくなってしまうなど注意する点もありますが、こちらの手法も多くの場面で実用されています。
技術士風に600字以内でまとめ!
ステンレスの腐食について技術士二次試験 筆記試験 問題Ⅱー1(選択科目)を想定して600字以内に収まるようにまとめてみました。
技術士試験を受ける予定のある方はぜひ参考にしてみてください。
なお、本記事では解説していない専門的な用語・事柄などが記載されている場合があります。
それらに関する詳細は市販されている参考書などをご参照ください。
<ここから600字でまとめ!>
異種金属接触腐食について、原理及び具体的防止法を以下に記載する。
1.原理
異種金属接触腐食は、電位差の異なる異種の金属を電気的に接続した時に自然電位が低い金属が集中して腐食する現象である。
その原理は、異種金属が接触した状態で水分などの電解質溶液等に接触すると両金属が局部電池として作用し、自然電位が低い金属から自然電位が高い金属に電荷が移動し、電荷を失った金属がイオンとして溶液中に溶け出すことによる。
2.具体的防止法
異種金属接触腐食を防止する手法を以下に記載する。
①ステンレス鋼同士、炭素鋼同士など、そもそも異種金属を組み合わせないことで腐食を防止する。あるいは、同一金属ではなくとも電位の近い金属を組み合わせることでも腐食を防止することが可能である。
②異種金属間を油やグリースなどで保護したり、塗装やスペーサー等で絶縁することで腐食を防止することが可能である。
③卑金属に対する貴金属の面積の割合を小さくすることで腐食速度を低下させることが可能である。
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