危険物取扱者の資格を取得するためには、危険物取扱者試験に合格する必要があります。
しかし、危険物取扱者には甲種、乙種、丙種の3種類があり、それぞれ試験の難易度や必要な勉強時間が異なります。
本記事では、危険物取扱者試験のうち特に人気が高い甲種と乙種4類(乙4)について、試験難易度や勉強時間を解説します。
また、おすすめの勉強方法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
受験する種類と場合分け | 勉強時間 |
---|---|
甲種:乙種を4種類合格してから受験する場合 | 60~120時間 |
甲種:理系大学卒業生がいきなり受験する場合 | 100~150時間 |
甲種:乙種を1種類合格し、実務経験を2年以上積んでから受験する場合 | 120~200時間 |
乙4:理系大学卒業生がいきなり受験する場合 | 50~80時間 |
乙4:文系の方がいきなり受験する場合 | 70~100時間 |
危険物取扱者とは
危険物取扱者とは、消防法で定められた「危険物」の取扱いや管理をする際に必要になる国家資格です。
一定数量以上の危険物を貯蔵する施設(ガソリンスタンドや化学工場など)では、危険物取扱者の有資格者を配置する義務があります。
甲種危険物取扱者 | 乙種危険物取扱者 | 丙種危険物取扱者 | |
---|---|---|---|
扱える危険物 | 第1類~第6類 すべて | 第1類~第6類のうち 試験に合格した類のみ | 第4類のうち 限られた危険物のみ |
無資格者への立会い | 可能 | 可能 | 不可能 |
試験の難易度 | 普通 (大卒程度) | 簡単 (高卒程度) | 簡単 (高校生程度) |
危険物取扱者の資格を取得することで、危険物を安全かつ適切に取り扱うことができるようになります。法律で定められた範囲内で社内で危険物を取り扱うことができるようになるため、業務上非常に重要な資格であると言えます。
危険物取扱者試験の内容
危険物取扱者を取得するための試験内容について解説します。
危険物取扱者試験の種類
危険物取扱者試験には、甲種・乙種・丙種の3種類があります。
特に、甲種はより高度な知識を必要でそれなりに難易度が高く、受験資格も必要です。
危険物取扱者の試験科目は甲種・乙種・丙種いずれも3科目で、甲種は高度かつ専門的、乙種・丙種は基礎的な知識が問われます。
試験科目は危険物に関する法令、物理学及び化学、危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法の3つに分かれており、試験方法は択一式です。
受験料 | 受験資格 | 試験科目 | |
---|---|---|---|
甲種危険物取扱者 | 6,600円 | あり | ・危険物に関する法令:15問 ・物理学及び化学:10問 ・危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法:20問 |
乙種危険物取扱者 | 4,600円 | なし | ・危険物に関する法令:15問 ・基礎的な物理学及び基礎的な化学:15問 ・危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法:10問 |
丙種危険物取扱者 | 3,700円 | なし | ・危険物に関する法令:15問 ・燃焼及び消火に関する基礎知識:10問 ・危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法:10問 |
「危険物に関する法令」と「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」が共通科目ですね
危険物取扱者試験の難易度
危険物取扱者試験の難易度は試験科目によって異なります。
甲種はより高度な知識が必要であるため、難易度も高いとされています。ただ、技術士のような難関資格とまではいかず、難易度レベルとしては普通レベルです。
一方、乙種・丙種は基礎的な知識が問われるため、比較的簡単に合格できます。
難易度レベル | 偏差値 | 合格率 | |
---|---|---|---|
甲種危険物取扱者 | 普通(大卒レベル) | 55 | 30~40% |
乙種危険物取扱者(第4類) | 簡単(高卒レベル) | 48 | 30~40% |
乙種危険物取扱者(第4類以外) | 簡単(高卒レベル) | 46 | 60~70% |
丙種危険物取扱者 | 簡単(高校生レベル) | 43 | 45~55% |
危険物取扱者試験に合格するための勉強時間
危険物取扱者試験に合格するために必要な勉強時間は、目安として「甲種」で約100~150時間、「乙種4類」で約50~100時間ほどと言われています。
ただし、自分がどの程度の知識があるか、理系なのか文系なのかによっても必要な勉強時間に差があります。
ここでは、ケースごとに細かく分けて勉強時間の目安を解説します。
受験する種類と場合分け | 勉強時間 |
---|---|
甲種:乙種を4種類合格してから受験する場合 | 60~120時間 |
甲種:理系大学卒業生がいきなり受験する場合 | 100~150時間 |
甲種:乙種を1種類合格し、実務経験を2年以上積んでから受験する場合 | 120~200時間 |
乙4:理系大学卒業生がいきなり受験する場合 | 50~80時間 |
乙4:文系の方がいきなり受験する場合 | 70~100時間 |
甲種:乙種を4種類合格してから受験する場合
甲種危険物取扱者を受験するためには受験要件を満たす必要があります。
それが乙種危険物取扱者に4種類合格していることです。
これまで乙種危険物取扱者に4種類も合格していますので、化学に関する基礎知識は問題ないでしょう。また法令などに関する勉強もしているはずなので、甲種を受験するための土壌はしっかりと出来上がっている状態のはずです。
比較的有利に勉強を進めることができるため、勉強時間は60時間~120時間程度で済むでしょう。
必要な勉強時間:60~120時間
甲種:理系大学卒業生がいきなり受験する場合
受験資格がある甲種危険物取扱者ですが、大学で化学を学んだ方はいきなり甲種危険物取扱者を受験することが可能です。
化学に関する知識があるということで有利と思われるかもしれませんが、それは甲種を受験する上では前提条件です。
大学では法令などの部分にはまず触れないでしょうから、この点について一から暗記していく必要があります。その分、乙種を4種類合格した人と比較して長めの勉強時間が必要になります。
必要な勉強時間:100~150時間
甲種:乙種を1種類合格し、実務経験を2年以上積んでから受験する場合
乙種危険物取扱者に1種類だけ合格し、その後実務経験を2年以上積むことでも甲種危険物取扱者の受験要件を満たすことが出来ます。
ただ、勉強時間は他の条件の方よりも長くなってしまうかもしれません。
乙種に合格しているのでそれなりに知識はある状態かと思いますが、実務経験を積んでいるうちに覚えた知識(特に暗記物)を忘れてしまうというケースもあるでしょう。改めて勉強する必要があります。
特に文系で化学が苦手だという方は長い勉強時間が必要となるでしょう。
必要な勉強時間:120~200時間
乙4:理系大学卒業生がいきなり受験する場合
乙種危険物取扱者は受験資格は特にありません。そのため、乙4は誰でも受験することが可能です。
大学で化学を学んでいた方は有利です。
法令など新たに覚えることはありますが、それでも乙4は基本的に暗記物ですので比較的短い時間で合格することが出来るでしょう。
必要な勉強時間:50~80時間
乙4:文系の方がいきなり受験する場合
乙種危険物取扱者は受験資格は特にありません。そのため、文系で化学の知識がなくても乙4は受験することが可能です。
ただ、やはり化学の知識がない分だけ多くの勉強は必要になります。大学で化学を学んでいた方よりも長い勉強時間が必要です。
とはいえ、乙4ならそこまで高度な知識は問われません。適切に勉強さえしていれば十分合格は出来るでしょう。
必要な勉強時間:70~100時間
危険物取扱者試験の勉強方法
危険物取扱者に合格するための勉強時間について解説してきましたが、これはあくまでも適切な方法で勉強した場合の話です。
「化学と物理が必要なんだな」といって何も考えずにがむしゃらに高校の教科書で勉強するなんていうことをしていたらかなり遠回りになってしまいます。
そこで、ここでは危険物取扱者に合格するための適切な勉強方法の一例について紹介します。
最適な勉強方法は人によって異なると思いますが、ここで紹介する勉強方法は多くの人にとって参考になるかと思います。
なお、甲種も乙4も難易度は異なっても基本的な勉強方法は同じです。
各科目の特徴を把握する
まずは情報収集です。出題される科目の特徴を把握しましょう。
といっても話は簡単です。
必要なことはここで全部まとめてしまいますので、とりあえず以下を読めば完結します。
科目 | 内容 |
---|---|
危険物に関する法令 | 暗記もの |
物理学及び化学 | 計算ちょっと必要 |
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 暗記もの |
「危険物に関する法令」と「危険物の性質並びにその火災予防及び消化の方法」は基本的に暗記問題です。
ひたすら繰り返し覚え込むしかないので、ここは力技ですね。
英単語を覚えるかのように、隙間時間などを使って暗記してみましょう。
一方で、「物理学及び化学」については計算が必要な問題です。
こちらは暗記ではなく「理解」が必要なので、文系の方は特に力を入れた方が良いでしょう。
まずは参考書と問題集を買う
危険物取扱者試験は過去問と正答が公開されていません。
厳密には過去問はほんのちょっとだけ公開されていますが、過去問の一例という程度で勉強に活用できるほどではありません。
他の資格では有効な手段である「過去問を繰り返し解く」という必殺技が使えないので注意が必要です。
過去問の一例はこちら(消防試験研究センター公式サイト)
ではどうすれば良いか。
大人しく参考書と問題集を買ってください。
こればかりはどうしようもありません。数千円で購入できますので、自分への投資と考えて購入してしまいましょう。
なお、中学高校の物理や化学の教科書を引っ張り出してきて勉強するのはあまり適切ではありません。
もちろん中学高校の教科書での勉強も効果がないわけではないのですが、いかんせん効率が悪いです。試験に必要なところと不要なところがごちゃ混ぜになっているので、危険物取扱者試験に合格するという意味では無駄が多いです。
あなたの目的は「危険物取扱者試験に合格する」ということですから、できるだけ最短距離を行くことをおすすめします。
とりあえず参考書を1周する
参考書と問題集を購入したら、とりあえず参考書を1周しましょう。
この時、内容が難しくて理解できないなと思ったら早々に飛ばしてしまって構いません。
だらだらと時間を使わずとりあえずまずは1周して、試験対策の全体像をつかみましょう。
1周したら次はしっかりと「理解」を深める
参考書をとりあえず1周したら、もう一度最初からやり直してみましょう。
大体理解できたという部分は1周目よりも1.5倍速くらいのスピードで進めることが出来ます。
一方、理解できていない部分は相変わらず手が止まるでしょうから、そこの部分はしっかりと対策しましょう。
多くの参考書には解説がついているはずですから、しっかりと解説を読んで「理解を深める」という作業を行います。
特に物理及び化学は「理解」が必要です
暗記物は図や語呂合わせで覚える
問題の中には理解するもなにも暗記さえしてしまえば答えられるという問題も多くあります。
そのような問題は、図を見てイメージで覚えたり、数字などなら語呂合わせで覚えてしまいましょう。
ちょっと子供っぽいと思うかもしれませんが、意外に効果は抜群ですよ。
忙しい場合には隙間時間を活用できる講座を使う
忙しくてそもそも勉強時間がとれないという場合には、隙間時間を使って勉強するようにしましょう。
危険物取扱者は比較的メジャーな資格ですから、各社から色々な講座が開設されています。
中にはスマホで勉強できるような講座もありますので、ぜひ使ってみてください。
価格もそこまで高くありませんよ。
まとめ
本記事では危険物取扱者試験の合格に必要な勉強時間と勉強方法について解説しました。
適切に勉強を進めていけば、甲種だとしても決して取れない資格ではありません。
その割に合格した時に受けられるメリットが大きいので、危険物取扱者はコスパの良い資格だと思います。
興味がある方はぜひ挑戦してみてください。