衛生管理者試験で有効な勉強方法として、過去問題集を解くという方法が挙げられます。
しかし、知識がない状態で過去問題集に挑戦してもなかなか頭に入ってこないのではないでしょうか。
そこで、本記事では「関係法令(有害業務に係るもの以外)」を解くために最低限必要な知識をわかりやすく解説しました。
本記事を読んでから過去問を繰り返し解くことで、合格基準である正答率60%を超えることが出来るはずです。
本記事では無駄に多くを解説せず、必要な分だけ知識をまとめています。
比較的読みやすいボリュームにでまとめましたので、読んでみてくださいね。
総括安全衛生管理者
総括安全衛生管理者に関する問題は頻出です。
まずはここから確認しておきましょう。
総括安全衛生管理者とは
総括安全衛生管理者とは、労働安全衛生法第10条で規定された「事業を実質的に統括管理する者」のことを指します。
総括安全衛生管理者とは、安全管理者や衛生管理者を指揮し、労働者の危険または健康障害を防止するための措置等の業務を統括管理する役割を担います。
総括安全衛生管理者の選任基準
総括安全衛生管理者を選任しなければならない事業場は、次のとおりです。
業種 | 事業場の規模 (常時使用する労働者数) |
---|---|
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業 | 100人以上 |
製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、 熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、 家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、 家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、 旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 | 300人以上 |
その他の業種 | 1,000人以上 |
その他の業務とは、例えば「製造業の本社など、製造を行わないいわゆる本社機能のみをもった事業場」のことです。
総括安全衛生管理者の資格要件
事業場において、その事業を実質的統括管理する権限及び責任を有する者(工場長など)に限ります。
引っ掛け問題として、以下のようなものがありますので注意してください。
【問い】
「総括安全衛生管理者は、事業場においてその事業の実施を統括管理する者又はこれに準ずる者
を充てなければならない。」
これは正しいか誤りか?
【答え】
誤り:「これに準ずる者」は総括安全衛生管理者の資格要件に含まれません。
過去問の解説
常時使用する労働者数が100人で、次の業種に属する事業場のうち、法令上、総括安全衛生管理者の選任が義務付けられていないものの業種はどれか。
衛生管理者試験 令和5年4月
(1)林業
(2)清掃業
(3)燃料小売業
(4)建設業
(5)運送業
シンプルな問題ですね。
総括安全衛生管理者の選任基準の表を確認しましょう。
(1)林業、(2)清掃業、(4)建設業、(5)運送業は常時使用する労働者数100人以上で総括安全衛生管理者の選任が必要です。
一方、(3)燃料小売業は常時使用する労働者数300人以上から総括安全衛生管理者の選任が必要です。
よって、答えは(3)燃料小売業です。
衛生委員会
労働安全衛生法では、一定の規模に該当する事業場では衛生委員会を設置することが義務付けられています。
衛生委員会に関する問題も2回に1回くらいのペースで出題されます。
頻出問題ですから、抑えておきましょう。
衛生委員会の設置基準
衛生委員会の設置基準は以下の通りです。
業種 | 常時使用する 労働者の数 | 衛生委員会の設置 |
---|---|---|
林業、鉱業、建設業、製造業の一部(木材・木製品製造業、 化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、 運送業の一部(道路貨物運送業、港湾運送業)、 自動車整備業、機械修理業、清掃業 | 50人以上 | 必要 |
製造業(上記以外) 運送業(上記以外) 電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、 家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、 家具・建具・じゅう器等小売業、 燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業 | 50人以上 | 必要 |
1と2以外の業種 | 50人以上 | 必要 |
要するに、どの業種でも50人以上労働者がいるなら衛生委員会を設置する義務があるということですね。
委員の構成
衛生委員会の構成委員にはこのような人にしなさいという条件があります。
委員の条件は以下の通りです。
衛生委員会の調査審議事項
衛生委員会の調査審議事項は次のように規定されています。
衛生委員会の開催に関するその他事項
衛生委員会は以下のように開催しなくてはいけません。
過去問の解説
衛生委員会に関する次の記述のうち、法令上、正しいものはどれか。
衛生管理者試験 令和5年4月
(1)衛生委員会の議長は、衛生管理者である委員のうちから、事業者が指名しなければならない。
(2)産業医のうち衛生委員会の委員として指名することができるのは、当該事業場に専属の産業医に限られる。
(3)衛生管理者として選任しているが事業場に専属でない労働衛生コンサルタントを、衛生委員会の委員として指名することはできない。
(4)当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士を衛生委員会の委員として指名することができる。
(5)衛生委員会は、毎月1回以上開催するようにし、議事で重要なものに係る記録を作成して、これを5年間保存しなければならない。
シンプルに正しいかどうかを確認していきましょう。
(1)誤り:議長になれるのは「衛生管理者である委員」ではなく「総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者若しくはこれに準ずる者」です。
(2)誤り:そのような規定はありません。
(3)誤り:そのような規定はありません。
(4)正しい:作業環境を測定しているなら「衛生に関し経験を有する労働者」に該当するといえます。
(5)誤り:記録の保存期間は5年ではなく3年です。
医師による健康診断
医師による健康診断に関する問題も良く出題されます。
こちらもしっかり抑えておきましょう。
実施が必要な健康診断の種類
事業者は、労働者に対して医師による健康診断を実施しなければなりません。(労働安全衛生法第66条)
また、労働者は事業者が行う健康診断を受けなければなりません。
実施が義務付けられている健康診断の種類は以下の通りです。
健康診断の種類 | 対象となる労働者 | 実施時期 |
---|---|---|
雇入時の健康診断 | 常時使用する労働者 | 雇入れの際 |
定期健康診断 | 常時使用する労働者 (次項の特定業務従事者を除く) | 1年以内ごとに1回 |
特定業務従事者の健康診断 | 有害な業務※に常時従事する労働者 | 左記業務への配置替えの際、 6月以内ごとに1回 |
海外派遣労働者の健康診断 | 海外に6ヶ月以上派遣する労働者 | 海外に6月以上派遣する際、 帰国後国内業務に就かせる際 |
給食従業員の検便 | 事業に附属する食堂または炊事場における 給食の業務に従事する労働者 | 雇入れの際、配置替えの際 |
※有害な業務とは以下を指します。(労働安全衛生規則第13条第1項第2号)
・多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
・多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
・ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
・土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
・異常気圧下における業務
・さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
・重量物の取扱い等重激な業務
・ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
・坑内における業務
・深夜業を含む業務
・水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
・鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
・病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
・その他厚生労働大臣が定める業務
一般健康診断の内容
「雇入時の健康診断」及び「定期健康診断」の内容は以下の通りです。
雇入時の健康診断 | 定期健康診断 |
---|---|
既往歴及び業務歴の調査 自覚症状及び他覚症状の有無の検査 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 胸部エックス線検査 血圧の測定 貧血検査(血色素量及び赤血球数) 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP) 血中脂質検査 血糖検査 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査) 心電図検査 | 既往歴及び業務歴の調査 自覚症状及び他覚症状の有無の検査 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 胸部エックス線検査及び喀痰検査 血圧の測定 貧血検査(血色素量及び赤血球数) 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP) 血中脂質検査 血糖検査 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査) 心電図検査 |
「雇入時の健康診断」と「定期健康診断」はほとんど同じですが、喀痰検査の有無が異なりますので注意してください。
なお、定期健康診断の一部項目については医師が必要でないと認めるときは省略することができます。
ただし、省略するためには以下の基準を満たしている必要があります。
省略可能な診断項目と条件は次の表にまとめました。
こちらは過去問でも出題されていますので覚えておきたいところです。
診断項目 | 医師が必要でないと認める時に左記の健康診断項目を省略できる者 |
---|---|
身長 | ・20歳以上の者 |
腹囲 | ・40歳未満(35歳を除く)の者 ・妊娠中の女性その他の者であって、 その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断された者 ・BMIが20未満である者 ・BMIが22未満であって、自ら腹囲を測定しその値を申告した者 |
胸部エックス線検査 | ・40歳未満のうち、次のいずれにも該当しない者 ①5歳毎の節目年齢(20歳、25歳、30歳及び35歳) の者 ②感染症法で結核に係る定期の健康診断の対象とされている施設等で働いている者 ③じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている者 |
喀痰検査 | ・胸部エックス線検査を省略された者 ・胸部エックス線検査によって病変の発見されない者 又は胸部エックス線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者 |
貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、 血糖検査、心電図検査 | 35歳未満の者及び36~39歳の者 |
過去問の解説
労働安全衛生規則に基づく次の定期健康診断項目のうち、厚生労働大臣が定める基準に基
衛生管理者試験 令和4年10月
づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる項目に該当しないものはどれか。
(1)自覚症状の有無の検査
(2)腹囲の検査
(3)胸部エックス線検査
(4)心電図検査
(5)血中脂質検査
まさに省略可能な定期健康診断の内容が出題されています。
(2)~(5)は省略可能な項目として規定されていますが、(1)自覚症状の有無の検査は規定されていません。
よって、答えは(1)です。
まとめ
「衛生管理者試験:関係法令(有害業務に係るもの以外)」について、知っておくべき基礎的な知識を解説しました。
この記事で基礎的な知識を確認しておき、さらに過去問を解くことで合格基準を満たせる実力がつくはずです。
繰り返し過去問を解いて、ぜひ衛生管理者試験に合格してください。