衛生管理者試験で有効な勉強方法として、過去問題集を解くという方法が挙げられます。
しかし、知識がない状態で過去問題集に挑戦してもなかなか頭に入ってこないのではないでしょうか。
そこで、本記事では「関係法令(有害業務に係るもの)」を解くために最低限必要な知識をわかりやすく解説しました。
本記事を読んでから過去問を繰り返し解くことで、合格基準である正答率60%を超えることが出来るはずです。
本記事では無駄に多くを解説せず、必要な分だけ知識をまとめています。
比較的読みやすいボリュームにでまとめましたので、読んでみてくださいね。
衛生管理者と産業医の選任基準
衛生管理者と産業医の選任基準は頻出問題です。
確実に覚えておくようにしましょう。
衛生管理者の選任及び専任基準
衛生管理者の選任及び専任基準は以下の通りです。
労働者数 | 衛生管理者数 | 通常業務だけの場合 | 常時30人以上有害業務を行う場合 | 常時30人以上更に有害な業務を行う場合 |
---|---|---|---|---|
50人以上~200人以下 | 1人以上 | 専任は不要 | 専任は不要 | 専任は不要 |
200人超~500人以下 | 2人以上 | 専任は不要 | 専任は不要 | 専任は不要 |
500人超~1000人以下 | 3人以上 | 専任は不要 | 1人は専任 | 1人は専任 更に1人は衛生工学衛生管理者 |
1000人超~2000人以下 | 4人以上 | 1人は専任 | 1人は専任 | 1人は専任 更に1人は衛生工学衛生管理者 |
2000人超~3000人以下 | 5人以上 | 1人は専任 | 1人は専任 | 1人は専任 更に1人は衛生工学衛生管理者 |
3000人超 | 6人以上 | 1人は専任 | 1人は専任 | 1人は専任 更に1人は衛生工学衛生管理者 |
有害な業務(労働基準法施行規則第18条より)
・坑内労働
・多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
・削岩機、鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務
・重量物の取扱い等重激なる業務
・ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
・このほか、厚生労働大臣の指定する業務
更に有害な業務(労働基準法施行規則第18条より)
・多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
・ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
・土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
・異常気圧下における業務
・鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務
常時30人以上危険な業務を行う場合は選任及び専任基準も厳しくなりますよということですね。
産業医の選任及び専属基準
産業医の選任及び専属基準は以下の通りです。
労働者数 | 産業医数 | 通常業務の場合 | 常時500人以上有害業務を行う場合 |
---|---|---|---|
50人以上~499人以下 | 1 | 専属の産業医は不要 | 専属の産業医は不要 |
500人以上~999人以下 | 1 | 専属の産業医は不要 | 専属の産業医が必要 |
1000人以上~3000人以下 | 1 | 専属の産業医が必要 | 専属の産業医が必要 |
3001人以上 | 2 | 専属の産業医が必要 | 専属の産業医が必要 |
有害な業務を行う事業場(労働安全衛生規則第13条第1項第2号より)
・多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
・多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
・ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
・土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
・異常気圧下における業務
・さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
・重量物の取扱い等重激な業務
・ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
・坑内における業務
・深夜業を含む業務(注意!)
・水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
・鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
・病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
・その他厚生労働大臣が定める業務
有害業務事業場の要件は産業医も衛生管理者と同じかなと思いきや、有害業務を行う人数の要件が違っています。(衛生管理者の場合は常時30人以上、産業医の場合は常時500人以上)
また、しれっと「深夜業を含む業務」なども追加で含まれますので注意してください。
過去問の解説
【問1】常時 600 人の労働者を使用する製造業の事業場における衛生管理体制に関する(1)~(5)の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。 ただし、600 人中には、製造工程において次の業務に常時従事する者がそれぞれに示す人数含まれているが、試験研究の業務はな、く他の有害業務はないものとし、衛生管理者及び産業医の選任の特例はないものとする。
衛生管理者試験 令和4年10月
深夜業を含む業務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・300 人
多量の低温物体を取り扱う業務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100 人
特定化学物質のうち第三類物質を製造する業務 ・・・・・・・・20 人
(1)衛生管理者は、3人以上選任しなければならない。
(2)衛生管理者のうち1人を、衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任しなければならない。
(3)衛生管理者のうち少なくとも1人を、専任の衛生管理者としなければならない。
(4)産業医としての法定の要件を満たしている医師で、この事業場に専属でないものを産業医として選任することができる。
(5)特定化学物質作業主任者を選任しなければならない。
(1)は正しいです。衛生管理者の表からそのまま読み取りましょう。
労働者数が600人なので「500人超~1000人以下」の区分に当てはまりますので、衛生管理者は3人以上必要です。
(2)は誤りです。衛生工学衛生管理者が必要な業務かを確認しましょう。
「多量の低温物体を取り扱う業務」「特定化学物質のうち第三類物質を製造する業務」いずれも衛生工学衛生管理者が必要な業務として規定されていませんので、衛生工学衛生管理者は不要です。
(3)は正しいです。こちらも衛生管理者の表から読み取りましょう。
労働者数が600人なので「500人超~1000人以下」の区分に当てはまります。更に、30人以上「多量の低温物体を取り扱う業務」を行っていますので、専任の衛生管理者が1人以上必要です。
(4)は正しいです。ただし、ちょっと引っ掛けがあります。
「多量の低温物体を取り扱う業務」は有害な業務に該当しますので、一見専属の産業医が必要なように見えます。但し、専属の産業医が必要になる500人以上という条件には届きません。
よって、産業医が専属である必要はありません。
(5)は正しいです。
「特定化学物質のうち第三類物質を製造する業務」は特定化学物質作業主任者を選任する必要があります。こちらは衛生管理者や産業医ではなく作業主任者に関する問題ですので、詳細は次項で解説します。
ということで、答えは(2)となります。
作業主任者の選任義務がある業務
作業者の選任義務がある業務に関する問題も良く出題されます。
こちらもしっかり覚えておきましょう。
作業主任者とは
作業主任者とは、危険作業を伴う事業場で危険作業に従事する労働者の指揮及び点検などを担当する人です。
作業の内容によって求められる資格を取得しておく必要があります。
作業主任者を選任したときは、当該作業主任者の氏名及びその者に行わせる事項を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければなりません。
なお、見やすい箇所に掲示する等については、当該作業主任者にに腕章をつけさせる、特別の帽子を着用させる等の措置が含まれるものであることとされています。
作業主任者の選任義務がある業務一覧
作業主任者の選任義務がある業務は以下の通りです。
正直なところ覚えきれないと思うので、とりあえず今はざっくり見るだけで構いません。
頻出作業や引っ掛けとして出される作業を後で紹介します。
作業主任者の選任義務がある業務 | 必要な資格 |
---|---|
高圧室内作業 | 高圧室内作業主任者免許 |
アセチレン溶接装置又はガス集合溶接装置を用いて行なう金属の溶接、溶断又は加熱の作業 | ガス溶接作業主任者免許 |
機械集材装置若しくは運材索道の組立て、解体、変更若しくは修理の作業又はこれらの設備による集材若しくは運材の作業 | 林業架線作業主任者免許 |
ボイラー(小型ボイラーを除く。)の取扱いの作業 | 特級・1級・2級ボイラー技士免許 ボイラー取扱技能講習 |
放射線業務に係る作業 | エックス線作業主任者免許 |
ガンマ線照射装置を用いて行う透過写真の撮影の作業 | ガンマ線透過写真撮影作業主任者免許 |
木材加工用機械を5台以上有する事業場において行なう当該機械による作業 | 木材加工用機械作業主任者技能講習 |
動力により駆動されるプレス機械を5台以上有する事業場において行なう当該機械による作業 | プレス機械作業主任者技能講習 |
危険物等に係る乾燥設備等による物の加熱乾燥の作業 | 乾燥設備作業主任者技能講習 |
コンクリート破砕器を用いて行う破砕の作業 | コンクリート破砕器作業主任者技能講習 |
掘削面の高さが2メートル以上となる地山の掘削 | 地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習 |
土止め支保工の切りばり又は腹おこしの取付け又は取りはずしの作業 | 地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習 |
ずい道等の掘削の作業又はこれに伴うずり積み、ずい道支保工の組立て、ロツクボルトの取付け若しくはコンクリート等の吹付けの作業 | ずい道等の掘削等作業主任者技能講習 |
ずい道等の覆工の作業 | ずい道等の覆工作業主任者技能講習 |
掘削面の高さが2メートル以上の岩石の採取のための掘削の作業 | 採石のための掘削作業主任者技能講習 |
高さが2メートル以上のはいのはい付け又ははいくずしの作業 | はい作業主任者技能講習 |
船舶に荷を積み、船舶から荷を卸し、又は船舶において荷を移動させる作業 | 船内荷役作業主任者技能講習 |
型わく支保工の組立て又は解体の作業 | 型わく支保工の組立て等作業主任者技能講習 |
つり足場、張出し足場又は高さが5メートル以上の構造の足場の組立て解体又は変更の作業 | 足場の組立て等作業主任者技能講習 |
高さが5メートル以上の建築物の骨組み又は塔で、金属製の部材で構成されるものの組立て、解体又は変更の作業 | 建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者技能講習 |
金属製の橋梁の上部構造(高さが5メートル以上又は橋梁の支間が30メートル以上)の架設、解体又は変更の作業 | 鋼橋架設等作業主任者技能講習 |
軒の高さが5メートル以上の木造建築物の構造部材の組立て又はこれに伴う屋根下地若しくは外壁下地の取付けの作業 | 木造建築物の組立て等作業主任者技能講習 |
高さが5メートル以上のコンクリート造の工作物の解体又は破壊の作業 | コンクリート造の工作物の解体等作業主任者技能講習 |
コンクリート造の橋梁の上部構造(高さが5メートル以上又は橋梁の支間が30メートル以上)の架設又は変更の作業 | コンクリート橋架設等作業主任者技能講習 |
第一種圧力容器の取扱いの作業 イ.化学設備に係る第一種圧力容器の取扱いの作業 ロ.イ以外のもの | イ.(化学設備関係第一種圧力容器取扱作業主任者技能講習) ロ.(特級・1級・2級ボイラー技士免許、化学設備関係第一種圧力容器取扱作業主任者技能講習、普通第一種圧力容器取扱作業主任者技能講習) |
特定化学物質等を製造し、又は取り扱う作業 | 特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習 |
鉛業務に係る作業 | 鉛作業主任者技能講習 |
四アルキル鉛等業務に係る作業 | 特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習 |
酸素欠乏危険場所における作業 イ.酸素欠乏危険作業場所における作業 ロ.酸素欠乏症、硫化水素中毒の危険場所における作業 | イ.(酸素欠乏危険作業主任者技能講習又は酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習) ロ.(酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習) |
屋内作業場、タンク、船倉、坑の内部その他一定の場所において有機溶剤を製造し、又は取り扱う作業 | 有機溶剤作業主任者技能講習 |
石綿等を取り扱う作業又は石綿等を試験研究のため製造する作業 | 石綿作業主任者技能講習 |
この中で、特に頻出される作業内容と引っ掛けで出される作業内容は以下の通りです。
とりあえずはこの2種類を覚えましょう。
このあたりが良く出題されるので、とりあえずこれを覚えましょう。
過去問の解説
【問2】次のAからDの作業について、法令上、作業主任者の選任が義務付けられているものの
衛生管理者試験 令和5年4月
組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 水深10m以上の場所における潜水の作業
B セメント製造工程においてセメントを袋詰めする作業
C 製造工程において硫酸を用いて行う洗浄の作業
D 石炭を入れてあるホッパーの内部における作業
思いっきり頻出問題がそのままでた形ですね。
A,Bはいずれも作業主任者の選任義務がない作業です。
C,Dは作業主任者の選任義務がある作業です。
よって、答えはC,Dの組み合わせになります。
特別教育が必要な業務
特別教育とは
特別教育とは、労働者を危険な業務に就かせる時にその業務に関する安全や衛生について行う教育のことです。
要は、危険な業務をやらせる際には安全に関する教育が必要ですよということですね。
特別教育が必要な業務
特別教育が必要な業務は労働安全衛生規則第36条で規定されています。
特別教育が必要な業務の例は以下の通りです。
特別教育が必要な業務(例)
・研削といしの取替え又は取替え時の試運転の業務
・アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等の業務
・最大荷重1トン未満のフォークリフトの運転の業務
・伐木等機械の運転の業務
など
引用:労働安全衛生規則第36条
こちらも全て覚えるのは難しいと思いますので、まずは頻出の業務と引っ掛けの業務を覚えましょう。
過去問の解説
【問3】次の業務に労働者を就かせるとき、法令に基づく安全又は衛生のための特別の教育を行
衛生管理者試験 令和5年4月
わなければならないものに該当しないものはどれか。
(1)石綿等が使用されている建築物の解体等の作業に係る業務
(2)高圧室内作業に係る業務
(3)有機溶剤等を用いて行う接着の業務
(4)廃棄物の焼却施設において焼却灰を取り扱う業務
(5)エックス線装置を用いて行う透過写真の撮影の業務
こちらはひとつずつ確認していくだけですね。
(1)(2)(4)(5)は特別教育が必要な業務としてよく出題される業務です。
一方、(3)は特別教育が必要な業務ではありません。
よって、答えは(3)です。
過去問を解こう:参考書がおすすめ
必要な知識を確認したら、次は実際に過去問を解いてみましょう。
過去問はこちらのページから参照できます。
⇒公表試験問題|安全衛生技術試験協会
安全衛生技術試験協会の公式サイトに過去問の正答は載っていますが、解説は全くないので注意してください。
分からない問題があればこのページやネットで検索して勉強をしていく必要があります。
「ネットで検索して個別に勉強する」というのは結構時間が掛かります。
そこまでの時間がとれないという方は参考書を使って過去問を解くことをおすすめします。
技術士試験に特化した参考書なら過去問の解説が掲載されていますので、ネットで検索して勉強するという必要もありません。
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まとめ
「衛生管理者試験:関係法令(有害業務に係るもの)」について、知っておくべき基礎的な知識を解説しました。
この記事で基礎的な知識を確認しておき、さらに過去問を解くことで合格基準を満たせる実力がつくはずです。
繰り返し過去問を解いて、ぜひ衛生管理者試験に合格してください。