ガソリンスタンドでは、ガソリンや灯油などの危険物を扱う業務があります。
危険物とは火災や爆発の原因となる可能性のある物質のことで、ガソリンや灯油などの石油製品はその代表例です。
危険物を扱うには法律で定められた資格が必要であり、その資格が「危険物取扱者」です。
ガソリンスタンドでは「危険物取扱者」が必要なので、「危険物取扱者」を取得していると重宝される傾向があります。
本記事では、ガソリンスタンドで危険物取扱者が重宝される理由と、危険物取扱者の概要について詳しく解説します。
- ガソリンスタンドでは危険物を取り扱う危険物取扱者の資格保有者が常駐している必要があるため、危険物取扱者を取得している人は重宝される傾向にある
- ガソリンや軽油は第4類危険物なので、「乙種4類危険物取扱者」(通称「乙4」)が必要
- 特にガソリンスタンドは給油(危険物の取り扱い)がメイン業務のため、危険物取扱者の資格保有者は重宝される
ガソリンスタンドでは危険物取扱者が必要
ガソリンスタンドではガソリンや軽油などの給油を行います。
このガソリンや軽油は消防法における危険物に該当し、ガソリンや軽油などの給油作業は危険物を取り扱う作業です。
日本では、「危険物を取り扱う場合には必ず『危険物取扱者』の資格保有者がいなければならない」と消防法で定められています。
そのため、危険物を取り扱う施設であるガソリンスタンドでは必ず危険物取扱者がいる必要があります。
製造所、貯蔵所及び取扱所においては、危険物取扱者(危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう。以下同じ。)以外の者は、甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければ、危険物を取り扱つてはならない。
消防法第13条第3項

ガソリンスタンドには危険物取扱者が必要であると法律で定められているわけです
危険物取扱者が一人いれば無資格者も危険物を取扱可能
ガソリンや軽油を給油する作業は危険物を取り扱う作業にあたりますが、危険物取扱者でない人(無資格者)でも作業を行うことは可能です。
消防法では危険物を取り扱う作業を以下のように限定しています。
- 危険物取扱者が自ら行う
- 危険物取扱者以外の者が危険物取扱者の立会いを受けて行う
つまり、ガソリンスタンド内に誰かひとりでも危険物取扱者がいれば、無資格者でも危険物を取り扱う作業が出来るということです。
危険物を取り扱う際には危険物取扱者の「立会い」が必要です。
例えば、「会社に危険物取扱者がいるからガソリンスタンド内にはいないけどオッケーでしょ」というのはNGというわけです。危険物取扱者はガソリンスタンド内に常駐している必要があります。
セルフガソリンスタンドにおける危険物取扱者
危険物取扱者の立会いについてはセルフ式のガソリンスタンドが分かりやすいと思います。
セルフ式のガソリンスタンドでは危険物取扱者ではない人でも自分で給油(危険物の取り扱い)が可能ですが、これはガソリンスタンド内にいる危険物取扱者が作業の監視を行っているためです。

お客さんが給油する際は危険物取扱者が店舗内から監視し、危険物取扱者が「給油許可」のボタンを押すことで給油できるようになるという仕組みです。
以前のガソリンスタンドではドライバー自ら給油作業等を行うことは法令上でも認められていませんでしたが、平成10年の法改正を機にセルフガソリンスタンドが解禁されました。
政府主導の規制緩和の流れや、米国などでは既にセルフガソリンスタンドが導入されていること等の背景があったようです。
給油作業における安全性を担保するため、危険物取扱者による立会いの他にも以下の安全対策が進められたようです。
・給油機への静電気除去シートの設置
・パッケージ型固定泡消火設備の設置
ガソリンや軽油、灯油は第4類危険物に該当する
ガソリンスタンドではガソリン、軽油、灯油などを取り扱いますが、これらは第4類危険物に該当します。
そのため、ガソリンスタンドでは危険物取扱者の中でも乙種4類(乙4)が必要になります。
類別 | 性質 | 代表的な物質の例 |
---|---|---|
第1類 | 酸化性固体 | 塩素酸ナトリウム、硝酸カリウム、 硝酸アンモニウム |
第2類 | 可燃性固体 | 赤リン、硫黄、鉄粉、 固形アルコール、ラッカーパテ |
第3類 | 自然発火性物質 及び禁水性物質 | ナトリウム、黄リン、 アルキルアルミニウム |
第4類 | 引火性液体 | ガソリン、灯油、軽油、 重油、アセトン、メタノール |
第5類 | 自己反応性物質 | ニトログリセリン、トリニトロトルエン、 ヒドロキシルアミン |
第6類 | 酸化性液体 | 過塩素酸、過酸化水素、 硝酸 |
危険物取扱者について解説

危険物取扱者とは、危険物を取り扱う際に必要になる国家資格、及びその資格保持者のことです。
危険物取扱者とは
危険物取扱者とは、消防法で定められた危険物を取り扱ったり、その取り扱いに立ち会ったりするために必要な国家資格です。
アルコールやガソリンなどの危険物を取り扱う製造業は多くあり、企業からの需要が高い国家資格です。
なお、危険物取扱者には甲種・乙種・丙種の3種類があり、それぞれ取り扱うことのできる危険物の種類や試験の難易度が異なります。
甲種危険物取扱者 | 乙種危険物取扱者 | 丙種危険物取扱者 | |
---|---|---|---|
扱える危険物 | 第1類~第6類 すべて | 第1類~第6類のうち 試験に合格した類のみ | 第4類のうち 限られた危険物のみ |
無資格者への立会い | 可能 | 可能 | 不可能 |
試験の難易度 | 普通 (大卒程度) | 簡単 (高卒程度) | 簡単 (高校生程度) |
ガソリンスタンドで必要なのは乙種4類(通称:乙4)
危険物取扱者は「甲種」「乙種」「丙種」の3種類があります。
さらに、「乙種」は第1類から第6類までの6種類に分かれます。
危険物取扱者の種類によって取り扱うことが出来る危険物の種類が定められており、甲種が一番難しい代わりに第1類から第6類までのすべての危険物を取り扱うことができます。一方、丙種は一番簡単ですが取り扱うことが出来る危険物の種類は極めて限定的です。

ガソリンスタンドなら乙種4類(乙4)を取得しておきたいところです
危険物取扱者試験の難易度
危険物取扱者試験の難易度は以下の通りです。
難易度レベル | 偏差値 | 合格率 | |
---|---|---|---|
甲種危険物取扱者 | 普通(大卒レベル) | 55 | 30~40% |
乙種危険物取扱者(第4類) | 簡単(高卒レベル) | 48 | 30~40% |
乙種危険物取扱者(第4類以外) | 簡単(高卒レベル) | 46 | 60~70% |
丙種危険物取扱者 | 簡単(高校生レベル) | 43 | 45~55% |
甲種の難易度レベルは普通、乙種と丙種の難易度レベルは簡単です。
比較的簡単に合格することが可能です。
ただし、試験では専門的な知識が問われます。
勉強しなかったり、勉強方法が適切でない場合には普通に不合格となってしまう程度には難しいです。

当サイトでは技術士や応用情報技術者などのまさに難関レベルの資格も紹介しています。
それら難関資格と比較したら普通というだけで、普通に勉強は必要です。
例えば、簡単といっても勉強なしで合格できるレベルではないので注意してくださいね。
危険物取扱者試験の勉強方法

合格までに必要な勉強時間
危険物取扱者試験の合格までに必要な勉強時間は以下の通りです。
受験する種類と場合分け | 勉強時間 |
---|---|
甲種:乙種を4種類合格してから受験する場合 | 60~120時間 |
甲種:理系大学卒業生がいきなり受験する場合 | 100~150時間 |
甲種:乙種を1種類合格し、実務経験を2年以上積んでから受験する場合 | 120~200時間 |
乙4:理系大学卒業生がいきなり受験する場合 | 50~80時間 |
乙4:文系の方がいきなり受験する場合 | 70~100時間 |
実務経験の有無や学習方法などによって必要になる勉強時間は異なりますが、おおむねこの程度を見積もっておけばよいでしょう。
資格試験になれた人なら参考書のみで合格を目指すのもアリ!
危険物取扱者試験では専門知識が問われますが、そこまで難しい試験ではありません。
さすがにまったく勉強せずに合格することはできませんが、勉強するための時間が十分とれて、試験勉強にも慣れているという方なら参考書で十分合格が目指せます。
- 勉強時間をしっかりとれる
- 学生である、もしくは少し前まで学生だった
- 他にも国家資格を持っている
- 普段から試験勉強が得意である
例えば「他にも既に国家資格を複数所有しており、資格試験に慣れている」という方なら参考書で十分合格できるでしょう。また、「学生、あるいはこの間まで学生だったので試験に慣れている」という方も参考書を使った勉強で十分合格が目指せます。

乙4程度なら参考書だけでも十分合格できる人はそれなりに多いと思いますよ
時間がない人は通信講座がおすすめ
一方、会社からの指示で危険物取扱者試験に挑戦するなどの場合には注意が必要です。
会社からの指示で危険物取扱者試験に挑戦するケースでは、「いつまでに危険物取扱者を取得すること」という期限が付けられることが多くあります。
ただでさえ日常業務で忙しいのに更に試験勉強まで要求されても、勉強時間がなくて無理だよというケースはよくあるのではないでしょうか?
そんな忙しい方は通信講座を利用するのがおすすめです。
通信講座であれば講師によるサポートが受けられるため、効率的な学習が可能です。
効率的に勉強することで勉強時間の短縮が期待できます。

あと、甲種を取ろうとする場合はそこそこ難しいので通信講座を使って効率よく合格してしまうという方法もアリですね。
まとめ
危険物取扱者の資格はガソリンスタンドで働くならぜひ取得したい資格ですが、ガソリンスタンド以外の場所で働く場合でもメリットが多い国家資格です。
危険物取扱者の資格を取得することで、自分のスキルやキャリアを向上させることができます。
もし興味があれば、ぜひチャレンジしてみてください!